【越境ECの消費税還付】簡易課税だと還付されない?輸出ビジネスを始める前に確認したい3つのポイント
越境ECや海外向けの輸出販売が伸びる中、eBay、Amazon、Shopee、自社ECサイトなどを利用して海外の顧客へ商品を販売する中小企業が増えています。
こうした輸出ビジネスでは、よく
「輸出売上は消費税が免税になるので、国内で仕入れた商品の消費税は還付される」
と説明されます。
確かに、一定の要件を満たす輸出取引には消費税の輸出免税が適用され、本則課税で仕入税額控除の要件を満たしていれば、国内で支払った消費税について還付が生じるケースがあります。
しかし、ここには非常に重要な落とし穴があります。
会社が「簡易課税制度」を選択している場合、実際に国内仕入れで多額の消費税を支払っていても、その金額をそのまま仕入税額控除することはできません。
その結果、
「輸出を増やせば消費税が還付されると思っていたのに、決算になって初めて還付を受けられないことが分かった」
という事態が起こることがあります。
越境ECや輸出ビジネスでは、売上が伸びてから消費税の申告方法を考えるのでは遅い場合があります。
今回は、越境EC・輸出取引と簡易課税制度の関係、消費税還付を受けるために事前に確認しておきたいポイントを、国際税務の実務の観点から解説します。
なぜ輸出すると消費税が還付されることがあるのか?
国内で商品を販売する場合、原則として売上に消費税がかかります。
一方、一定の要件を満たす商品の輸出などについては、消費税の**「輸出免税」**が適用されます。
つまり、海外の顧客への輸出売上について日本の消費税を負担させない一方、課税事業者が本則課税で申告する場合には、要件を満たす国内仕入れ等に係る消費税について仕入税額控除を行うことができます。
その結果、
売上に係る消費税より、控除できる仕入れ等の消費税の方が大きくなれば、消費税の還付が生じる
という仕組みです。
国税庁も、一定の輸出取引について消費税が免税となることを定めています。
このため、国内で商品を仕入れて海外へ販売する越境ECでは、消費税還付がキャッシュフローに大きな影響を与えることがあります。
ただし、ここで重要なのが、
「自社がどの方法で消費税を計算しているか」
です。
本則課税と簡易課税では、消費税の計算方法がまったく違う
消費税の計算方法には、大きく分けて
- 本則課税(原則課税)
- 簡易課税
があります。
本則課税の場合
本則課税では、原則として、
売上に係る消費税 − 実際の課税仕入れ等に係る控除対象消費税
によって納付税額を計算します。
したがって、輸出売上が多く、売上に係る消費税が少ない一方で、国内での商品仕入れなどに多額の消費税を支払っている場合には、還付になる可能性があります。
簡易課税の場合、実際に支払った仕入消費税では計算しない
一方、簡易課税制度では考え方がまったく異なります。
簡易課税は、一定の要件を満たす事業者について、実際の仕入れに係る消費税を一件ずつ積み上げる代わりに、
売上に係る消費税額 × 業種ごとに定められた「みなし仕入率」
を利用して控除対象となる消費税額を計算する制度です。
簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下であるなど一定の要件を満たす事業者が、事前に届出を行うことで適用します。
ここが、越境ECでは非常に重要です。
簡易課税では、国内の商品仕入れで実際に300万円、500万円の消費税を支払っていたとしても、その実額を使って仕入税額控除を計算するわけではありません。
そのため、本則課税なら還付が生じるような輸出ビジネスでも、簡易課税では同じ結果にならないことがあります。
【具体例】申告方法の違いで200万円の差が出るケース
分かりやすく、単純化した例で考えてみましょう。
会社の状況
国内でアパレル商品を
2,200万円(税込)
で仕入れたとします。
このうち消費税相当額を200万円とします。
そして、その商品をすべて海外顧客へ
3,000万円で輸出販売
したとします。
輸出免税の要件を満たしているものとします。
ケース1 本則課税の場合
輸出売上に係る消費税
0円
国内仕入れに係る控除対象消費税
200万円
単純化すれば、
0円 − 200万円 = 200万円の還付
となる可能性があります。
会社にとって、この200万円は非常に大きなキャッシュです。
越境ECのように商品の仕入れが先行するビジネスでは、消費税還付が資金繰りに与える影響も小さくありません。
ケース2 簡易課税の場合
簡易課税では、実際に支払った200万円をそのまま控除する計算をしません。
売上に係る消費税額を基礎として、みなし仕入率を使って税額を計算します。
今回のように輸出免税売上だけを想定した単純なケースでは、本則課税で想定されるような
「国内仕入れで支払った200万円を実額で控除して還付を受ける」
という計算にはなりません。
結果として、
本則課税なら200万円の還付が想定されるのに、簡易課税ではその還付を受けられない
という大きな差が生じる可能性があります。
これが、越境ECと簡易課税を組み合わせるときに注意すべき最大のポイントです。
「だったら簡易課税をやめればいい」は、すぐにはできない場合がある
ここで経営者の方からよく出るのが、
「輸出を始めるなら、簡易課税をやめて本則課税に変更すればいいのでは?」
という疑問です。
考え方としてはその通りです。
問題は、変更のタイミングです。
簡易課税制度の選択をやめるためには、原則として、
簡易課税をやめたい課税期間が始まる日の前日まで
に「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出する必要があります。
例えば3月決算法人が4月1日から始まる事業年度について簡易課税をやめたいのであれば、原則としてその前日の3月31日までに手続きを検討する必要があります。
つまり、
「今年、海外売上が予想以上に伸びた。今期から本則課税に変えて還付を受けよう」
と思っても、期中になってから自由に変更できるわけではありません。
さらに、簡易課税制度を選択した場合、原則として2年間継続した後でなければ適用をやめることができません。
例外的な取扱いが認められる場合もありますが、単なる届出忘れだけで自由に変更できる制度ではありません。
だからこそ、越境ECや輸出事業では、
「事業を始める前の消費税シミュレーション」
が非常に重要なのです。
越境ECを始める前に確認したい3つのポイント
1.現在、簡易課税の届出が出ていないか確認する
最初に確認したいのが、自社の消費税に関する届出状況です。
特に注意したいのが、
「以前の税理士から、事務処理が楽になると言われて簡易課税を選択した」
という会社です。
国内取引が中心だった時期には簡易課税が適していたとしても、ビジネスモデルが変わり輸出売上が大きくなると、最適な消費税の申告方法が変わることがあります。
過去の
「消費税簡易課税制度選択届出書」
が現在も効力を持っていないか、まず確認しましょう。
2.輸出開始前に「本則課税と簡易課税」をシミュレーションする
重要なのは、
「簡易課税だから得」「本則課税だから得」
と一律に判断しないことです。
国内売上と海外売上の割合、粗利益率、仕入金額、設備投資、外注費などによって、有利不利は変わります。
例えば、
- 越境ECの売上が急増する予定
- 国内で大量の商品を仕入れる
- 大きな設備投資を予定している
- 国内販売から海外販売へ事業構造が変わる
といった会社では、翌期以降の消費税を事前に試算する価値が高くなります。
特にスタートアップや中小企業では、数百万円の消費税還付の有無が、そのまま運転資金に影響することもあります。
海外展開の事業計画を作る段階で、税務も同時に設計することが重要です。
3.輸出したことを証明する書類を必ず保存する
本則課税にすれば、自動的に消費税が還付されるわけではありません。
輸出免税の適用を受けるためには、
実際に国外へ商品を輸出したことを証明できる書類
を適切に保存しておく必要があります。
例えば、取引内容に応じて、
- 輸出許可書
- 国際郵便の引受けを証する書類
- EMSの発送伝票等の控え
- その他、輸出の事実を証明するために必要な書類
などが重要になります。
特に越境ECでは、1件当たりの取引金額や発送方法によって必要書類が異なる場合があります。
国税庁も、郵便物について、価格が20万円を超える場合と20万円以下の場合、EMS・小包郵便物・通常郵便物などで保存すべき書類を区分しています。
eBayやAmazonなどの販売履歴だけ保存して、
「海外のお客様に売ったことは分かるから大丈夫だろう」
と考えるのは危険です。
ECサイト上の販売データだけではなく、
「実際に日本から海外へ輸出されたことを確認できる証拠」
まで含めて保存体制を構築することが重要です。
Amazon・eBay・Shopeeなどの越境ECは「売れてから税務を考える」と遅い
越境ECでは、
「まず商品を出品して、売上が伸びたら税理士に相談しよう」
と考える経営者の方も少なくありません。
しかし、消費税についてはこの順番が逆になることがあります。
簡易課税の届出、課税事業者の選択、輸出免税の証憑保存などには、後から修正することが難しいものがあるからです。
特に、
- Amazonで海外販売を開始する
- eBayで日本の商品を海外へ販売する
- Shopeeなど東南アジア向けECへ進出する
- Shopifyなどで海外向け自社ECサイトを開設する
- 国内販売中心から輸出中心へ事業転換する
といった場合には、売上開始前に消費税の確認をおすすめします。
「簡易課税の方が楽」という理由だけで選んでいませんか?
簡易課税制度には、経理処理の負担を軽減できるというメリットがあります。
したがって、簡易課税そのものが悪い制度というわけではありません。
問題なのは、
会社のビジネスモデルが変わっているのに、昔提出した届出をそのままにしていること
です。
国内販売だけだった会社が海外販売を開始する。
国内売上90%だった会社が、数年後には海外売上50%になる。
こうした変化が起これば、消費税の最適な申告方法も変わる可能性があります。
越境EC・輸出企業に必要なのは、単なる申告作業ではなく、
「今後の海外売上まで見据えた消費税の設計」
です。
越境EC・輸出取引の消費税で、こんなお悩みはありませんか?
- これからAmazon・eBay・Shopeeなどで海外販売を始めたい
- 越境ECの消費税還付を受けられるのか知りたい
- 自社が簡易課税になっているか分からない
- 本則課税へ変更した方が有利なのか試算したい
- 消費税簡易課税制度選択不適用届出書の期限が気になる
- EMS・DHL・FedExなどで輸出した場合の必要書類を確認したい
- 海外売上が急増し、現在の顧問税理士が国際税務に詳しくない
- 輸出による消費税還付について税務調査が心配
一つでも該当する場合は、実際に取引を開始する前に確認しておくことをおすすめします。
越境EC・海外取引の税務は「取引前」の確認が重要です
海外取引の税務では、
取引後に正しく申告すること以上に、取引前に制度を選択しておくこと
が重要になるケースがあります。
特に消費税は、届出書の提出期限によって翌期以降の税負担や還付額が変わる可能性があります。
当事務所では、渋谷を拠点に、海外取引を行う中小企業・外資系企業・スタートアップなどを対象として、
- 越境EC・輸出取引の消費税相談
- 消費税還付の事前シミュレーション
- 本則課税・簡易課税の比較
- 消費税に関する各種届出の確認
- 海外取引に必要な帳簿・証憑の確認
- 国際税務・海外取引全般の税務相談
などをサポートしています。
代表税理士が直接、会社の取引内容や今後の海外展開を確認しながら対応します。
「来期から海外販売を増やす予定なので、今の消費税の届出で問題ないか確認したい」
という段階でのご相談でも構いません。
越境ECや海外取引では、売上が発生してからでは変更できない税務上の選択があります。
海外販売を始める前、あるいは次の事業年度が始まる前に、一度消費税の取扱いを確認してみてください。
お問い合わせはこちら

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