【輸入消費税の落とし穴】通関業者に払ったから安心ではない?輸入名義・輸入許可書・関税評価で起きる税務リスク

海外から商品・原材料・製造設備などを輸入している企業では、輸入消費税や関税の処理について、国内取引と同じ感覚で経理処理をしているケースがあります。

しかし、輸入取引には国内取引とは異なる独特のルールがあります。

特に注意したいのが、

  • 輸入者の名義
  • 輸入許可書の保存
  • 輸入消費税の仕入税額控除
  • 関税評価における加算要素
  • 海外へのロイヤリティやデザイン料等の支払い

です。

「通関業者から請求された輸入消費税を払っているから控除できる」

「海外メーカーのインボイス価格をそのまま税関に申告しておけば問題ない」

とは限りません。

輸入取引では、ちょっとした認識の違いが、税関の事後調査や税務調査で輸入消費税・関税・法人税・源泉所得税など複数の税目に波及する可能性があります。

今回は、海外取引を行う日本企業が確認しておきたい「輸入消費税」と「関税評価」のポイントを、国際税務の観点から解説します。


1.輸入消費税は国内取引の消費税とは仕組みが違う

まず押さえておきたいのが、国内取引と輸入取引では、消費税の仕組みが異なるという点です。

国内取引では、原則として事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等が消費税の課税対象となります。

一方、輸入取引では、保税地域から引き取られる外国貨物そのものが課税対象となります。

そのため、通常の売買取引だけでなく、一定の場合には無償で取得した貨物などについても、国内に引き取る段階で輸入消費税が発生することがあります。

また、輸入消費税の計算基礎となる金額も、海外メーカーからの請求書に記載された商品代金だけとは限りません。

一般に関税課税価格を基礎として、関税等を加えた金額から輸入消費税を計算することになります。

ここが、国内取引の消費税と大きく異なるポイントです。


2.要注意。「輸入消費税を払った会社」と「控除できる会社」が違うことがある

輸入取引で特に確認したいのが、誰の名義で輸入申告しているかです。

例えば、日本企業A社が海外メーカーから商品を購入したとします。

A社には通関のノウハウがなかったため、輸入代行会社B社に輸入手続を依頼しました。

B社が自社名義で輸入申告を行い、税関へ輸入消費税を納付します。

その後、B社からA社へ、

「輸入代行手数料+輸入消費税相当額」

として請求し、A社がその全額を支払ったとします。

A社の経理担当者からすれば、

「輸入消費税を最終的に負担しているのは当社なのだから、当社の消費税申告で仕入税額控除できるだろう」

と考えたくなるところです。

しかし、ここに大きな注意点があります。

輸入消費税の仕入税額控除では、単に「誰が最終的にお金を負担したか」だけでなく、誰が課税貨物を保税地域から引き取ったのか、輸入申告がどのように行われているのかが重要になります。

したがって、輸入代行会社など他社の名義で輸入申告が行われている場合、自社が実質的に輸入消費税相当額を負担していても、そのまま自社の仕入税額控除として処理できるとは限りません。

輸入代行会社や通関業者を利用している企業は、一度、自社の輸入スキームを確認しておくことをお勧めします。


3.通関業者の請求書だけを保存していませんか?

もう一つ実務で確認したいのが、輸入許可書の保存です。

国内取引では、仕入税額控除の適用にあたり適格請求書(インボイス)などの保存が重要になります。

そのため、経理担当者が輸入取引についても、

「海外メーカーのインボイスと通関業者の請求書を保存しているから大丈夫」

と考えてしまうことがあります。

しかし、輸入消費税については、税関から交付される輸入許可書等の輸入に関する書類が非常に重要です。

例えば、次のような状態になっていないでしょうか。

「通関関係の書類はすべて通関業者に任せている」

「会計ソフトには通関業者の請求書しか添付していない」

「輸入許可書を見たことがない」

「輸入許可書の輸入者名義を確認したことがない」

海外から継続的に商品や原材料を輸入している会社であれば、経理部門と物流・貿易部門との間で輸入関係書類の管理方法を確認しておくことが重要です。


4.海外メーカーのインボイス価格=関税課税価格とは限らない

輸入取引では、もう一つ重要な問題があります。

それが**関税評価における「加算要素」**です。

例えば、海外メーカーから商品を1,000万円で購入したとします。

経理担当者は、

「海外メーカーのInvoiceが1,000万円だから、1,000万円を基準に輸入申告すればよい」

と考えるかもしれません。

しかし、実際の関税課税価格は、必ずしも海外メーカーのインボイス価格だけで決まるわけではありません。

取引条件によっては、商品代金とは別に日本企業が負担している一定の費用を、関税課税価格に加算する必要があります。


5.特に見落としやすい「加算要素」

実務上、特に確認したいのが次のような費用です。

日本までの運賃・保険料

FOBやEXWなどの条件で商品を購入し、日本側企業が国際運賃や保険料を別途負担しているケースです。

商品代金だけを見て輸入申告していると、必要な費用が関税課税価格に反映されていない可能性があります。

海外メーカーへ無償提供した金型・治具など

例えば、日本企業が製品の製造に必要な金型を製作し、それを海外メーカーへ無償で提供しているケースです。

「金型代は日本で支払った費用だから輸入価格とは関係ない」

と思われがちですが、輸入貨物の生産に使用される一定の物品や役務については、関税評価上の検討が必要になることがあります。

デザイン・設計・技術関連費用

日本側企業が海外で行われたデザイン、設計その他の役務等について別途費用を負担している場合も注意が必要です。

単に海外メーカーのInvoiceだけを確認するのではなく、その商品を製造するために日本側が他に何を負担しているのかまで確認する必要があります。

ロイヤリティ・ライセンス料

輸入商品の製造・販売等に関連して、商品代金とは別に特許権、商標権、ノウハウなどの使用料を支払っている場合があります。

こうしたロイヤリティ等についても、契約内容や支払条件によって関税評価上の検討が必要になることがあります。


6.関税の問題だけで終わらないのが海外取引の怖いところ

関税評価の誤りが見つかった場合、

「不足していた関税を追加で払えば終わり」

とは限りません。

例えば、税関の事後調査で金型代、デザイン料、ロイヤリティなどの取扱いが問題になった場合、その取引内容によっては、

関税 → 輸入消費税 → 法人税 → 源泉所得税

と、複数の税目について確認が必要になる可能性があります。

例えば、海外企業へ支払っている金額が単なる商品代ではなく、特許権、ノウハウその他の権利の使用料等に該当する場合には、日本側で源泉徴収が必要かどうかという別の国際税務上の論点が生じることがあります。

さらに、金型やデザイン費用についても、法人税上どのように取得価額や費用として処理するのかを検討しなければならないケースがあります。

海外取引では、一つの契約について「消費税だけ」「法人税だけ」と個別に判断すると、別の税目の問題を見落としやすくなります。

これが国際取引の税務処理が難しい理由の一つです。


7.海外から輸入している会社が確認したい5つのポイント

海外から継続的に商品・原材料・設備等を輸入している企業は、少なくとも次の項目を確認してみてください。

① 輸入許可書の「輸入者」は自社になっているか

通関業者や輸入代行会社に任せきりにせず、実際の輸入申告名義を確認します。

② 輸入許可書を保存しているか

通関業者の請求書だけで経理処理していないか確認します。

③ 商品代金以外の支払いがないか

海外メーカーや関連会社などに、ロイヤリティ、ライセンス料、デザイン料、設計料、技術関連費用等を支払っていないか確認します。

④ 海外メーカーへ金型・治具・材料などを提供していないか

無償提供だから税務上関係ない、と判断する前に関税評価への影響を確認する必要があります。

⑤ 経理部門と貿易・物流部門の情報が分断されていないか

これが意外に重要です。

経理担当者は海外送金を把握しているものの、輸入申告の内容を知らない。一方、物流担当者は通関を把握しているものの、海外へのロイヤリティ支払いを知らない。

このような社内の情報分断が、関税評価や国際税務上のミスにつながることがあります。


8.輸入取引は「Invoice・契約書・輸入許可書」をセットで確認する

輸入取引の税務チェックでは、会計帳簿だけを確認しても十分とは限りません。

重要なのは、

海外企業との契約書
+ 海外メーカーのInvoice
+ 輸入許可書・通関関係書類
+ 海外への送金内容

を横断的に確認することです。

特に、

  • 海外から継続的に商品を輸入している
  • 海外メーカーへ金型等を提供している
  • 商品代とは別にロイヤリティ等を支払っている
  • 海外子会社・関連会社から輸入している
  • 輸入代行会社を利用している
  • 通関業務を外部へ任せきりにしている

といった企業では、一度輸入スキーム全体を整理しておく価値があります。


まとめ|海外取引の税務は「実際に払った金額」だけでは判断できない

輸入消費税や関税評価で問題になりやすいのは、

「実際に自社がお金を払っているのだから大丈夫」

という感覚と、税務・関税上の取扱いが一致しないケースです。

輸入消費税では、輸入申告の名義や保存書類が重要になります。

また関税評価では、海外メーカーのInvoiceに記載された商品価格だけでなく、運賃・保険料、金型、デザイン・設計関連費用、ロイヤリティなどについても確認が必要になる場合があります。

さらに、その判断が輸入消費税だけでなく、法人税や源泉所得税などに影響するケースもあります。

海外取引の税務は、一つの税目だけを見るのではなく、取引全体から判断することが重要です。

辻国際税理士事務所では、海外取引を行う日本企業からの国際税務に関するご相談に対応しています。

「現在の輸入処理で問題がないか確認したい」

「輸入代行会社を利用しているが、輸入消費税の処理が正しいか分からない」

「海外メーカーへのロイヤリティや金型代も含めて税務処理を確認したい」

「税関の事後調査や税務調査の前に、海外取引の処理を整理しておきたい」

といった場合には、契約内容や輸入スキーム、輸入許可書、海外送金の内容などを確認したうえで、個別の取引に応じて検討する必要があります。

海外取引・輸入取引の税務処理でご不明な点がある場合は、お問い合わせフォームよりご相談ください。

お問い合わせはこちら

    Be the first to comment

    Leave a Reply

    Your email address will not be published.


    *