【中小企業の経理担当者必見】身近な海外取引に潜む「うっかり税務ミス」3選(源泉所得税・消費税編)
海外との大きな取引がない中小企業であっても、国際税務と無縁ではいられません。日常業務の中に紛れ込んでいる「身近な海外取引」において、日本の国内取引と同じ感覚で経理処理をしてしまうと、思わぬ追徴課税を受けるリスクがあります。
今回は、中小企業の経理担当者がうっかり間違えやすい「3つの落とし穴」について解説します。
1. 海外出張が長引いた!社員の「居住ステータス」変更による源泉徴収の罠
社員が海外拠点へ出張したり、現地に赴任したりすることは珍しくありません。当初は「3か月の予定」だった出張が、業務の都合などで急遽「1年超」に延長されるケースがあります。
ここで注意すべきなのが、所得税法上の**「居住者」と「非居住者」のステータスの切り替わり**です。日本の税法では、原則として国内に住所を有するか、1年以上居所を有する個人を「居住者」とし、それ以外を「非居住者」とします。
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落とし穴: 出張期間が1年以上になると見込まれた時点で、その社員は日本の税法上「非居住者」として扱われます。非居住者になると、給与の課税ルールが変わり、日本国内での勤務に対応する部分のみが課税対象になるなど、居住者の頃とは源泉徴収の方法が大きく異なります。
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税務調査の視点: 調査官は、「社員の居住者と非居住者のステイタス切替えが適切に認識されているか」「ステイタスに応じた源泉徴収が行われているか」を厳しくチェックします。経理部門と人事部門で出張期間の変更情報をしっかり共有しておくことが不可欠です。
2. 源泉徴収を忘れて「会社が自腹」を切るなら「グロスアップ計算」が必要
海外の専門家への報酬支払いや、非居住者となった社員への給与など、本来は源泉徴収が必要な支払いで、うっかり天引きを忘れて全額を相手に支払ってしまうミスがよく起こります。
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落とし穴: 後日、税務調査等で源泉徴収漏れが発覚した場合、本来は支払い相手から税金分を返金してもらい、それを会社が税務署に納付するのが原則です。しかし、相手が海外の取引先である場合など、「返金交渉が難しいので会社が自腹を切って(自己負担して)納付しよう」と考えるケースがあります。
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グロスアップの罠: 会社が肩代わりして税金を納付する場合、相手から見れば「会社から税金相当額の追加利益をもらった」ことになります。そのため、実際に支払った額を「税引き後の手取額」とみなし、税引前の「総額(税込金額)」を逆算する**「グロスアップ計算」**を行わなければなりません。
結果として、支払者が自分で負担する場合は、納付すべき源泉税額がさらに増えることになり、企業側の痛手は大きくなります。
3. 海外ネットサービスの利用における消費税の罠(電気通信利用役務の提供)
現代のビジネスに欠かせない、海外事業者が提供するクラウドサービス、オンライン広告、電子書籍などのデジタルサービスの利用。これらは消費税法上**「電気通信利用役務の提供」**と呼ばれます。
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落とし穴: これらを日本の事業者が購入した場合、消費税の扱いが非常に複雑です。
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事業者向けサービス(B to B): 広告配信など事業者のみが利用するサービスの場合、**「リバースチャージ方式」**が適用され、サービスを受けた日本の事業者が、海外事業者に代わって消費税を申告・納付する義務を負います(※課税売上割合が95%以上の場合は当分の間免除される特例あり)。
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消費者向けサービス(B to C): 一般の個人も利用するようなクラウドサービスなどを会社経費として利用した場合、リバースチャージの対象にはなりません。しかし、インボイス制度導入後は、その海外事業者が日本の**「適格請求書発行事業者」**として登録されていなければ、原則として仕入税額控除ができなくなっています。
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「クレジットカードの明細があるから今まで通り消費税の控除をしよう」と安易に処理していると、実は控除の対象外だった、という事態になりかねません。
まとめ
中小企業が気を付けるべき、日常の海外取引リスクは以下の3点です。
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出張期間の延長による社員の**「非居住者」判定の見落とし**に注意。
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源泉徴収漏れを会社が負担すると**「グロスアップ計算」**で税負担が膨らむ。
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海外デジタルサービスの利用は、リバースチャージの要否やインボイス登録の有無を確認する。
「たかが経費の支払い」「ただの出張」と思わず、国境を越える取引には常に日本の国内取引とは異なるルールが絡むことを意識し、適切に処理を行っていきましょう。
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