【海外取引の罠】「海外で引かれた税金は日本の法人税から引ける」の大きな誤解
~外国税額控除の注意点~
中小企業においても、インターネットを通じて海外企業へサービスを提供したり、システムやデジタルコンテンツを販売したりする機会が増えています。その際、海外の取引先からの入金額を見て**「請求額より少ない」**と驚いた経験はないでしょうか。
多くの場合、それは相手国での**「源泉所得税」**が天引きされているためです。
経理担当者から「日本の確定申告で**『外国税額控除』**を使えば、二重課税を防いで日本の法人税から差し引けるから大丈夫ですよ」と言われ、安心してしまう経営者も少なくありません。しかし、そこには大きな落とし穴が潜んでいます。
**「海外で引かれた税金が、すべて日本で控除できるわけではない」**のです。
1. 外国税額控除の基本(二重課税の解消)
日本の法人は、世界中のどこで稼いでも日本の法人税がかかります(全世界所得課税)。一方で、海外で稼いだ所得には現地でも税金が課されるため、同じ利益に対して二度税金がかかる「二重課税」が発生します。
この二重課税を解消するための制度が**「外国税額控除」**です。基本的な仕組みとして、外国で支払った税金分を、日本で納める法人税から差し引くことができます。ここまでは間違いではありません。
2. 落とし穴:「本来払わなくてよかった税金」は控除されない!
問題となるのは、日本と相手国との間に**「租税条約」**が結ばれている場合です。
租税条約には、「このような取引の場合、相手国での税金は免除、または〇%に軽減する」といったルールが定められています。
具体例: 日本の法人がX国の企業にサービスを提供した場合、X国の国内法で20%の源泉徴収が必要でも、日・X国租税条約により「現地に支店(PE)がなければ免税」とされるケースがあります。
ここで、取引先が租税条約を知らなかったり、手続きを省略したりして、自国の法律通りに20%を天引きして送金してきたらどうなるでしょうか?
「引かれた分は日本の外国税額控除で取り戻せばいい」と考えるのはNGです。日本の税務当局は次のように判断します。
「その税金は租税条約を適用すれば本来払う必要がなかったもの(相手のミス)なので、日本の税金から控除することは認めません」
つまり、租税条約で軽減・免除されるはずだった部分は、外国税額控除の対象外となってしまうのです。
3. 日本の税務署は「相手のミス」の面倒は見ない
「払わなくてもいい税金分まで、日本の税収を減らして補填することはできない」というのが税法のスタンスです。
この場合、控除できなかった税金は日本の会社がそのまま**自腹を切る(負担する)**ことになります。相手国から税金を取り戻すには、現地の税務当局へ還付手続きを行う必要がありますが、言語や手間の壁から泣き寝入りになるケースも少なくありません。
まとめ:海外取引は「事前のコミュニケーション」が命
「ただのサービス提供」であっても、海外取引には複雑な税務リスクが伴います。痛い目を見ないためのポイントは以下の2点です。
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契約前に租税条約を確認する 取引相手の国と日本の間に租税条約があるか、どのような減免規定があるかを確認しましょう。
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取引先と税金の扱いをすり合わせる 「源泉税が発生する場合の処理」や「租税条約の適用に必要な書類(居住者証明書など)」について、事前に協議しておくことが不可欠です。
海外取引では、「後で日本で調整すればいい」という事後処理の考え方は通用しません。**「取引を始める前」**に、税理士等の専門家を交えて準備を行うことが、自社の利益を守る最大の防御策となります。
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