平成31年度税制大綱 国際税務

平成31年度税制大綱が公表されました。国際税務関連は下記に公表されております。(以下 改正大綱より引用)

6 経済活動の国際化・電子化への対応と租税回避・脱税の効果的な抑制

経済活動の国際化・電子化は経済成長に貢献する一方で政策課題ももたらしている。国際課税制度の構築に当たっては、引き続き、平成29年度税制改正大綱の「今後の国際課税のあり方についての基本的考え方」で掲げた基本方針の下、電子化を含む経済実態の変化や諸外国の動向を踏まえ、日本企業の健全な海外展開を支えるとともに、国際的な租税回避や脱税に対してより効果的に対応していく必要がある。

平成31年度税制改正においては、過大支払利子税制及び移転価格税制について、「BEPSプロジェクト」の合意事項等に沿って諸外国において対応が進んでいることを踏まえ、企業実態にも配慮しつつ、必要な制度改正を行う。過大支払利子税制については、利子の損金算入制限に関し、対象利子の範囲の拡大及び損金算入限度額の算定方法の見直し等により税源浸食リスクに応じた強化を行う。また、移転価格税制については、独立企業間価格の算定方法を整備するとともに、一定の価値評価の困難な無形資産の取引に関して税務当局が取引後の事実関係を参照して取引価格の適切性を検証することが可能となるよう、OECD移転価格ガイドラインの改訂内容等を踏まえた見直しを行う。

100か国以上が参加する非居住者の金融口座情報の自動的交換(共通報告基準に基づく情報交換)が本格的に始まるなど透明性の向上に向けた取組みも進んでいる。今後も国際協調において主導的な役割を果たすため、わが国も引き続き国際合意に則った制度の整備を進める必要がある。特に、共通報告基準に関する法制については、国際的な議論を踏まえて見直しの要否を検討する。また、義務的開示制度については、「BEPSプロジェクト」における勧告や諸外国の制度・運用実態等を踏まえ、制度導入の可否等につき引き続き検討を進める。

経済の電子化に伴い、物理的な拠点なく事業を行う外国企業の事業所得に十分な課税が行えないといった現行の国際課税原則の問題が顕在化している。このような課題に対して各国が各々に対応すれば、企業のビジネス展開上の不確実性を増加させ、経済活動に負の影響をもたらすことから、グローバルかつ長期的に持続可能な解決策を2020年までにとりまとめるべく、来年のG20の議長国として国際的な議論を主導していく必要がある。

五 国際課税

1 過大支払利子税制の見直し

(国 税)

関連者等に係る純支払利子等の課税の特例(いわゆる「過大支払利子税制」)について、次の見直しを行う。

(1)対象となる純支払利子等の額

その事業年度における対象支払利子等の額(支払利子等の額から対象外支払利子等の額を控除した残額をいう。以下同じ。)の合計額からこれに対応するものとして計算した受取利子等の額の合計額(以下「控除対象受取利子等合計額」という。)を控除した残額(以下「対象純支払利子等の額」という。)を本税制の対象とする。

(2)対象外支払利子等の額

上記(1)の「対象外支払利子等の額」とは、次に掲げる支払利子等の区分に応じ、それぞれ次に定める金額(注)をいう。

(注)一定の関連者が他の者を通じて当該法人に資金を供与したと認められる場合その他の場合における当該他の者に対する支払利子等の額を除く。

① ②に掲げる支払利子等以外の支払利子等 次に掲げる金額

イ 支払利子等を受ける者においてわが国の課税所得に含まれる支払利子等の額

ロ 一定の公共法人に対する支払利子等の額

ハ 借入れと貸付けの対応関係が明らかな債券現先取引等に係る支払利子等の額(イ及びロに掲げる金額を除く。)

② 特定債券利子等(当該法人が発行した債券(その取得をした者が実質的に多数でないものを除く。)に係る支払利子等で非関連者に対するものをいう。以下同じ。) 債券ごとに次のいずれかの金額

イ その支払の時に源泉徴収が行われ、又はその特定債券利子等を受ける者においてわが国の課税所得に含まれる特定債券利子等の額及び一定の公共法人に対する特定債券利子等の額

ロ 次に掲げる債券の区分に応じ、それぞれ次に定める金額

(イ)国内で発行された債券 特定債券利子等の額の95%に相当する金額

(ロ)国外で発行された債券 特定債券利子等の額の25%に相当する金額

(3)調整所得金額
調整所得金額の計算上、当期の所得金額に加算する金額から受取配当等の益金不算入額及び外国子会社配当等の益金不算入額を除外し、当期の所得金額から減算する金額から法人税額から控除する所得税額の損金不算入額を除外するほか、匿名組合契約の営業者の調整所得金額の計算について所要の措置を講ずる。

(4)損金不算入額
その事業年度における対象純支払利子等の額が調整所得金額の20%(現行:50%)を超える場合には、その超える部分の金額に相当する金額は、損金の額に算入しないこととする。

(5)適用免除基準
次のいずれかに該当する場合には、本税制を適用しないこととする。

① その事業年度における対象純支払利子等の額が2,000万円以下(現行:1,000万円以下)であること。

② その事業年度におけるイに掲げる金額のロに掲げる金額に対する割合が20%以下であること。

イ 内国法人及び当該内国法人との間に発行済株式等の50%超を保有する等の関係のある他の内国法人(その事業年度開始の日及び終了の日がそれぞれ当該開始の日の属する当該内国法人の事業年度開始の日及び終了の日であるものに限る。ロにおいて同じ。)の対象純支払利子等の額の合計額から対象純受取利子等の額(控除対象受取利子等合計額から対象支払利子等の額の合計額を控除した残額をいう。)の合計額を控除した残額

ロ 内国法人及び当該内国法人との間に発行済株式等の50%超を保有する等の関係のある他の内国法人の調整所得金額の合計額から調整損失金額(調整所得金額の計算において零を下回る金額が算出される場合のその零を下回る金額をいう。)の合計額を控除した残額

(注)適用免除に係る「その事業年度における関連者支払利子等の額の合計額が総支払利子等の額の50%以下である」旨の要件は廃止する。

(6)超過利子額の損金算入

① その事業年度における対象純支払利子等の額が調整所得金額の20%(現行:50%)に満たない場合において、前7年以内に開始した事業年度に本税制の適用により損金不算入とされた金額(以下「超過利子額」という。)があるときは、その対象純支払利子等の額と調整所得金額の20%(現行:50%)に相当する金額との差額を限度として、当該超過利子額に相当する金額を損金の額に算入する。

② 上記①について、修正申告書又は更正請求書にその適用を受ける金額等を記載した書類の添付がある場合にもその適用を受けることができることとする等の見直しを行う。

(7)その他

上記の見直しのほか、過大支払利子税制について所要の措置を講ずる。

(8)関連制度の整備

連結法人の関連者等に係る純支払利子等の課税の特例について、上記(5)②を除き、上記と同様の見直しを行う。

(注1)上記((6)②を除く。)の改正は、平成32年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用する。

(注2)上記(6)②の改正は、平成32年4月1日以後に確定申告書等の提出期限が到来する法人税について適用する。

(地方税)

法人住民税及び事業税について、関連者等に係る純支払利子等の課税の特例(いわゆる「過大支払利子税制」)の見直しに関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

2 移転価格税制の見直し

(国 税)

国外関連者との取引に係る課税の特例(いわゆる「移転価格税制」)について、「BEPSプロジェクト」の勧告により改訂されたOECD移転価格ガイドライン等を踏まえ、次の見直しを行う。

(1)移転価格税制の対象となる無形資産の明確化

移転価格税制の対象となる無形資産は、法人が有する資産のうち、有形資産及び金融資産(現金、預貯金、有価証券等)以外の資産で、独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って譲渡・貸付け等が行われるとした場合に対価の支払が行われるべきものとする。

(2)独立企業間価格の算定方法の整備

独立企業間価格の算定方法(以下「価格算定方法」という。)として、OECD移転価格ガイドラインにおいて比較対象取引が特定できない無形資産取引等に対する価格算定方法として有用性が認められているディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)を加える。

これに伴い、独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類の提出等がない場合の推定課税における価格算定方法に、国税当局の当該職員が国外関連取引の時に知り得る状態にあった情報を基にしてDCF法により算定した金額を独立企業間価格とする方法を加える。

(3)評価困難な無形資産に係る取引(特定無形資産取引)に係る価格調整措置の導入

特定無形資産に係る取引(以下「特定無形資産取引」という。)に係る独立企業間価格の算定の基礎となる予測と結果が相違した場合には、税務署長は、当該特定無形資産取引に係る結果及びその相違の原因となった事由の発生の可能性を勘案して、当該特定無形資産取引に係る最適な価格算定方法により算定した金額を独立企業間価格とみなして更正等をすることができることとする。ただし、上記により算定した金額と当初取引価格との相違が20%を超えていない場合は、この限りでない。

① 特定無形資産
上記の「特定無形資産」とは、次に掲げる要件の全てを満たす無形資産をいう。

イ 独自性があり重要な価値を有するものであること。

ロ 予測収益等の額を基礎として独立企業間価格を算定するものであること。

ハ 独立企業間価格の算定の基礎となる予測が不確実であると認められるものであること。

② 適用免除要件

国税当局の当該職員が次のイ又はロに掲げる書類の提出等を求めた日から一定期間以内に法人からその書類の提出等があった場合には、価格調整措置は適用しない。

イ 次に掲げる書類

(イ)特定無形資産取引に係る独立企業間価格の算定の基礎となる予測の詳細を記載した書類

(ロ)当該予測と結果が相違する原因となった事由が災害その他これに類するものであり取引時においてその発生を予測することが困難であったこと、又は取引時において当該事由の発生の可能性を適切に勘案して独立企業間価格を算定していたことを証する書類

ロ 特定無形資産の使用により生ずる非関連者収入が最初に生じた日を含む事業年度開始の日から5年を経過する日までの間の予測収益等の額と実際収益等の額との相違が20%を超えていないことを証する書類

(注)法人から上記ロに掲げる書類の提出等があった場合には、価格調整措置はその経過する日後は適用しない。

(4)移転価格税制に係る更正期間等の延長

移転価格税制に係る法人税の更正期間及び更正の請求期間等を7年(現行:6年)に延長する。

(5)差異調整方法の整備

比較対象取引の利益率を参照する価格算定方法に係る差異調整について、定量的に把握することが困難な差異があるために必要な調整を加えることができない場合には、いわゆる四分位法に基づく方法により差異調整を行うことができることとする。

(6)その他

上記の見直しのほか、移転価格税制について所要の措置を講ずる。

(7)関連制度の整備

外国法人等の内部取引に係る課税の特例及び内国法人等の国外所得金額の計算の特例について、上記と同様の見直しを行う。

(注)上記の改正は、平成32年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税及び平成33年分以後の所得税について適用する。

(地方税)

個人住民税、法人住民税及び事業税について、国外関連者との取引に係る課税の特例(いわゆる「移転価格税制」)の見直しに関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

3 外国子会社合算税制の見直し

(国 税)

内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)について、次の見直しを行う。

(1)特定外国関係会社

① ペーパー・カンパニーの範囲から、次の外国関係会社を除外する。

イ 持株会社である一定の外国関係会社

(イ)子会社の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で、その資産の額の95%超が子会社の株式等及び一定の現預金等の資産の額であり、かつ、その収入の額の95%超が子会社からの配当等の額及び一定の預金利子の額であるもの

(注)上記の「子会社」とは、その外国関係会社の本店所在地国と同一国に所在する外国法人で、当該外国関係会社による持分割合が25%以上等の要件に該当するものをいう。

(ロ)特定子会社の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で、その本店所在地国と同一国に所在する管理支配会社によってその事業の管理、支配及び運営等が行われていること、当該管理支配会社が当該同一国において行う事業の遂行上欠くことのできない機能を果たすこと、その資産の額の95%超が特定子会社の株式等及び一定の現預金等の資産の額であること、その収入の額の95%超が特定子会社からの配当等の額、特定子会社の株式等の一定の譲渡対価の額及び一定の預金利子の額であること等の要件の全てに該当するもの((ロ)において「被管理支配会社」という。)

(注1)上記の「特定子会社」とは、その外国関係会社の本店所在地国と同一国に所在する部分対象外国関係会社又は管理支配会社に係る他の被管理支配会社をいう。

(注2)上記の「管理支配会社」とは、経済活動基準を満たす外国関係会社で、その本店所在地国においてその役員又は使用人がその主たる事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているものをいう。ロにおいて同じ。

ロ 不動産保有に係る一定の外国関係会社

(イ)その本店所在地国と同一国に所在する一定の不動産又は特定子会社の株式等の保有を主たる事業とする外国関係会社で、当該同一国に所在する管理支配会社によってその事業の管理、支配及び運営等が行われていること、当該管理支配会社が当該同一国において行う事業(不動産業に限る。)の遂行上欠くことのできない機能を果たすこと、その資産の額の95%超が当該不動産、特定子会社の株式等及び一定の現預金等の資産の額であること、その収入の額の95%超が当該不動産及び特定子会社の株式等から生ずる収入の額並びに一定の預金利子の額であること等の要件の全てに該当するもの((イ)において「被管理支配会社」という。)

(注)上記の「特定子会社」とは、管理支配会社に係る他の被管理支配会社をいう。

(ロ)その本店所在地国と同一国に所在する管理支配会社が自ら使用する当該同一国に所在する不動産の保有を主たる事業とする外国関係会社で、当該管理支配会社によってその事業の管理、支配及び運営等が行われていること、当該管理支配会社が当該同一国において行う事業の遂行上欠くことのできない機能を果たすこと、その資産の額の95%超が当該不動産及び一定の現預金等の資産の額であること、その収入の額の95%超が当該不動産から生ずる収入の額及び一定の預金利子の額であること等の要件の全てに該当するもの

ハ 資源開発等プロジェクトに係る一定の外国関係会社

特定子会社の株式等の保有、非関連者から調達した資金の特定子会社への提供又はその外国関係会社の本店所在地国と同一国に所在する一定の不動産の保有を主たる事業とする外国関係会社で、当該同一国に所在する管理支配会社等によってその事業の管理、支配及び運営等が行われていること、当該管理支配会社等が当該同一国において行う当該同一国の石油・天然ガス等の資源又は社会資本の開発又は整備等に関する事業(ハにおいて「資源開発等プロジェクト」という。)の遂行上欠くことのできない機能を果たすこと、その資産の額の95%超が特定子会社の株式等、特定子会社に対する一定の貸付金、当該不動産及び一定の現預金等の資産の額であること、その収入の額の95%超が特定子会社の株式等、当該貸付金及び当該不動産から生ずる収入の額並びに一定の預金利子の額であること等の要件の全てに該当するもの

(注1)上記の「特定子会社」とは、その外国関係会社の本店所在地国と同一国に所在する持分割合10%以上の外国法人で、管理支配会社等が当該同一国において行う資源開発等プロジェクトの遂行上欠くことのできない機能を果たすものをいう。

(注2)上記の「管理支配会社等」とは、経済活動基準を満たす外国関係会社で、その本店所在地国においてその役員又は使用人が資源開発等プロジェクトを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事しているものをいい、その本店所在地国と同一国に所在する他の外国法人の役員又は使用人と共同で当該業務の全てに従事している場合の当該他の外国法人を含む。

② ペーパー・カンパニーの判定における保険委託者特例について、次の措置を講ずる。

イ 保険委託者特例の対象となる外国関係会社に関する「一の内国法人(保険業を主たる事業とするものに限る。)によってその発行済株式等の全部を直接又は外国法人を通じて間接に保有されている外国関係会社である」旨の要件について、「一の内国法人(保険業を主たる事業とするもの又は保険持株会社に限る。)及び当該一の内国法人との間に発行済株式等の全部を保有する等の関係のある内国法人(保険業を主たる事業とするもの又は保険持株会社に限る。)によってその発行済株式等の全部を直接又は外国法人を通じて間接に保有されている外国関係会社である」旨の要件に見直す。

ロ 特定保険受託者の要件に、その本店所在地国においてその役員又は使用人が保険業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事している旨の要件を加える。

(注1)上記イ及びロは、対象外国関係会社の判定及び部分対象外国関係会社である外国金融機関の判定についても同様とする。

(注2)上記イ、ロ及び(注1)は、英国ロイズ市場において、現地の法令に従って設立された保険引受子会社と管理運営子会社が一体となって保険業を営む場合も同様とする。

③ 事実上のキャッシュ・ボックスの範囲に、次のいずれにも該当する外国関係会社を加える。

イ 当該事業年度における非関連者等からの一定の収入保険料(ロにおいて「特定収入保険料」という。)の合計額の収入保険料の合計額に対する割合が10%未満である外国関係会社

ロ 当該事業年度における収入保険料(特定収入保険料を除く。ロにおいて同じ。)に係る非関連者等に対する一定の支払再保険料の合計額の収入保険料の合計額に対する割合が50%未満である外国関係会社

(2)対象外国関係会社(非関連者基準)

保険業を主たる事業とする外国関係会社の非関連者基準の判定について、次の措置を講ずる。

① 特定保険委託者又は特定保険受託者の再保険に係る収入保険料のうち、次に掲げる要件の全てに該当する再保険に係るものについて、関連者から収入するものに該当しないこととする。

イ 特定保険委託者とその特定保険委託者に係る特定保険受託者との間で行われる再保険又は同一の特定保険受託者に係る特定保険委託者の間で行われる再保険であること。

ロ その再保険に係る元受保険の95%以上が本店所在地国に所在する非関連者のリスクに係るものであること。

ハ 資本の効率化に資するものであること。

② 特定保険受託者に係る特定保険委託者は関連者に含まれないものとはしないこととした上で、特定保険受託者がその特定保険委託者から受ける業務委託手数料相当額について、関連者からの収入保険料に該当しないこととする。

英国ロイズ市場において、現地の法令に従って設立された保険引受子会社と管理運営子会社が一体となって保険業を営む場合も同様とする。

(3)会社単位の合算課税制度における適用対象金額

現地法令基準を用いて適用対象金額を計算する場合の基準所得金額は、外国関係会社の本店所在地国の法人所得税に関する法令の規定から連結納税の規定及びパススルーとして取り扱われる規定を除いた規定を適用して計算した外国関係会社の所得の金額に非課税所得等の金額の調整を加えた金額とする。

(4)適用免除基準における租税負担割合

① 所得の金額

外国関係会社の本店所在地国の外国法人税に関する法令の規定により計算した所得の金額は、当該法令の規定から連結納税の規定及びパススルーとして取り扱われる規定を除いた規定を適用して計算した外国関係会社の所得の金額に非課税所得等の金額の調整を加えた金額とする。

② 外国法人税の額

外国関係会社の本店所在地国(注)において課される外国法人税の額は、当該外国法人税に関する法令の規定から連結納税の規定及びパススルーとして取り扱われる規定を除いた規定を適用して計算した外国関係会社の所得の金額につき外国法人税が課されるものとして計算される外国法人税の額とする。

(注)その本店所在地国が無税国又は一定の免税国であり、かつ、その本店所在地国以外の国において当該本店所在地国以外の国の法人として課税を受ける一定の外国関係会社にあっては、当該本店所在地国以外の国とする。

(5)部分合算課税制度における部分適用対象金額

①に掲げる金額から②に掲げる金額を減算した金額について、部分対象外国関係会社(外国金融子会社等に該当するものを除く。)に係る部分合算課税の対象となる特定所得の金額に加える。

① 収入した保険料の合計額から支払った再保険料の合計額を控除した残額

② 支払った保険金の額の合計額から収入した再保険金の額の合計額を控除した残額

(注1)上記により特定所得の金額に加えられる金額は、部分適用対象金額の計算上、損益通算グループ所得の金額に該当することとする。

(注2)特定所得の金額である異常所得の金額は、上記①に掲げる金額から上記②に掲げる金額を減算した金額がないものとした場合の各事業年度の所得の金額を基礎として計算することとする。

(6)二重課税調整

① 外国関係会社が本店所在地国で連結納税等を適用している場合の外国税額控除の計算

内国法人が合算課税の適用を受ける場合に控除される外国法人税の額のうち、外国関係会社の本店所在地国(注)において課される外国法人税の額は、当該外国法人税に関する法令の規定から連結納税の規定及びパススルーとして取り扱われる規定を除いた規定を適用して計算した外国関係会社の所得の金額につき外国法人税が課されるものとして計算される外国法人税の額とする。

(注)その本店所在地国が無税国又は一定の免税国であり、かつ、その本店所在地国以外の国において当該本店所在地国以外の国の法人として課税を受ける一定の外国関係会社にあっては、当該本店所在地国以外の国とする。

② 外国子会社からの配当等に係る二重課税調整の適用要件

内国法人が合算課税の対象となった外国法人等から受ける配当等に係る二重課税調整について、修正申告書又は更正請求書にその適用を受ける金額等を記載した書類の添付がある場合にもその適用を受けることができることとする等の見直しを行う。

(7)その他

上記の見直しのほか、外国子会社合算税制について所要の措置を講ずる。

(8)関連制度の整備

居住者に係る外国子会社合算税制及び特殊関係株主等である内国法人等に係る外国関係法人に係る所得の課税の特例について、上記と同様の見直しを行う。

(注1)上記((1)③、(5)及び(6)②を除く。)の改正は、内国法人の平成31年4月1日以後に終了する事業年度の合算課税(外国関係会社の平成30年4月1日以後に開始する事業年度に係るものに限る。)について適用する。

(注2)上記(1)③及び(5)の改正は、外国関係会社の平成31年4月1日以後に開始する事業年度について適用する。

(注3)上記(6)②の改正は、内国法人の平成31年4月1日以後に確定申告書等の提出期限が到来する法人税について適用する。

(地方税)

個人住民税、法人住民税及び事業税について、内国法人の外国関係会社に係る所得の課税の特例(いわゆる「外国子会社合算税制」)の見直しに関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

4 平成32年に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会に参加等をする非居住者及び外国法人に係る課税の特例の創設

(国 税)

(1)平成32年に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会(以下「大会」という。)に参加する選手である非居住者の一定の給与等及び報奨金等並びに大会に参加する選手団に属する非居住者及び審判員である非居住者その他大会の円滑な準備又は運営に関する一定の業務((2)において「大会関連業務」という。)を行う非居住者の一定の給与等については、所得税を課さない。

(2)大会を主催する外国法人、大会の放送に係る映像の制作等を行う外国法人、大会の放送に関する権利を有する外国法人、大会の競技に係る計測等又は結果の集計等を行う外国法人その他の大会関連業務を行う外国法人が支払を受ける一定の使用料及びその一定の恒久的施設帰属所得については、それぞれ所得税及び法人税を課さない。

(3)上記(2)の外国法人の法人税の課税対象とされる国内源泉所得に係る所得の金額の全部につき法人税が非課税とされる場合に確定申告書等の提出を不要とする等の所要の措置を講ずる。

(地方税)

(1)個人住民税について、平成32年に開催される東京オリンピック競技大会又は東京パラリンピック競技大会(以下「大会」という。)に参加する選手である非居住者の一定の給与等及び報奨金等並びに大会に参加する選手団に属する非居住者及び審判員である非居住者その他大会の円滑な準備又は運営に関する一定の業務((2)において「大会関連業務」という。)を行う非居住者の一定の給与等に関する国税の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

(2)大会を主催する外国法人、大会の放送に係る映像の制作等を行う外国法人、大会の放送に関する権利を有する外国法人、大会の競技に係る計測等又は結果の集計等を行う外国法人その他の大会関連業務を行う外国法人((3)において「大会関連法人」という。)のうち、大会関連業務のみを行う恒久的施設以外の恒久的施設を有さない者に対しては、法人住民税及び法人事業税を課さない等の所要の措置を講ずる。

(3)大会関連法人のうち上記(2)の適用を受け法人住民税及び法人事業税が非課税とされる場合に確定申告書等の提出を不要とする等の所要の措置を講ずる。

5 台湾との間での金融口座情報の自動的な提供のための報告制度等の整備

(国 税)

(1)台湾との間での金融口座情報の自動的な提供のための報告制度の整備

① 報告金融機関等は、その年の12月31日において、当該報告金融機関等の国内にある営業所等を通じて特定取引を行った者(外国金融商品取引所において上場されている法人等を除く。)が報告対象契約を締結している場合には、その報告対象契約ごとに、特定取引を行った者(その者が特定法人である場合における当該特定法人に係る実質的支配者等を含む。)の氏名又は名称、住所又は本店等の所在地、特定居住地国及び当該報告対象契約に係る資産の価額、当該資産の運用、保有又は譲渡による収入金額その他必要な事項(以下「報告事項」という。)を、その年の翌年4月30日までに、電子情報処理組織を使用する方法又は光ディスク等の記録用の媒体を提出する方法により、当該報告金融機関等の本店等の所在地の所轄税務署長に提供しなければならない。

(注)上記の「報告対象契約」とは、特定取引に係る契約のうち次に掲げるものをいう。

イ 特定居住地国が台湾である者等が締結しているもの

ロ 特定居住地国が台湾以外の国又は地域である特定法人で、当該特定法人に係る実質的支配者の特定居住地国が台湾である特定法人が締結しているもの

② 報告金融機関等は、報告事項その他必要な事項に関する記録を作成し、保存しなければならない。

③ 報告事項の提供に関する調査に係る質問検査権の規定を整備する。

④ 報告事項の不提供・虚偽記載又は報告事項の提供に関する調査に係る検査忌避等に対する罰則を設ける。

⑤ その他所要の措置を講ずる。

(2)国別報告事項の提供制度における子会社方式の適用に係る最終親会社等の居住地国に台湾を加える。

(注)上記の改正は、平成31年4月1日以後に開始する最終親会計年度に係る国別報告事項について適用する。

6 その他

(国 税)

(1)特定外国法人が特定金融機関等との間で行う債券現先取引に係る利子等の非課税措置について、次の措置を講じた上、その適用期限を2年延長する。

① 非課税の対象となる債券現先取引の範囲に、特定金融機関等(金融商品取引清算機関及び日本銀行を除く。)との間で次に掲げる債券を用いて行う取引期間3月以内等の要件を満たす債券現先取引を加える。

イ 一定の外国が発行し、又は保証する債券(当該外国の通貨をもって表示されるものに限る。)

ロ 上記イの外国の特別の法令の規定に基づき設立された一定の外国法人が発行する債券(当該外国の通貨をもって表示されるものに限る。)

② 外国投資信託の信託財産につき支払を受ける債券現先取引に係る利子について、当該外国投資信託が振替公社債等の利子等の非課税制度における適格外国証券投資信託である場合に限り、一定の要件の下に、所得税の非課税の対象とする。

③ その他所要の措置を講ずる。

(注)上記の改正は、平成31年4月1日以後に開始する債券現先取引につき支払を受ける利子等について適用する。

(2)非居住者又は外国法人が受ける振替社債等の利子等の非課税制度について、次の措置を講ずる。

① 振替特定目的信託受益権のうち社債的受益権につき支払を受ける剰余金の配当等の非課税措置の適用期限を3年延長する。

② 東日本大震災復興特別区域法に規定する特定地方公共団体との間に完全支配関係がある内国法人が発行する利益連動債(地方公共団体が債務保証をしないものに限る。)につき支払を受ける利子等の非課税措置は、適用期限の到来をもって廃止する。

(3)平成30年度税制改正で見直しが行われた特定目的会社の利益の配当等に係る源泉徴収等の特例(平成32年1月1日施行)を円滑に実施するため、次の措置を講ずる。

① 特定目的会社の利益の配当の額に係る所得税の額から控除する外国法人税の額は、その外国法人税の額のうち、その支払に係る利益の配当の額に対応する部分の額を限度として、その支払を受ける者ごとに計算した金額の合計額とする。

② その他所要の措置を講ずる。

(注1)上記の改正は、投資法人の配当等に係る源泉徴収等の特例、特定目的信託の剰余金の配当に係る源泉徴収等の特例及び特定投資信託の剰余金の配当に係る源泉徴収等の特例についても同様とする。

(注2)上記の改正は、平成32年1月1日以後に支払われる利益の配当等について適用する。

(4)組織再編税制の見直しへの対応

① 合併法人等の発行済株式の全部を間接に保有する関係がある法人の株式を対価とする合併等が行われる場合の適格合併等の該当性の要件の見直しに伴い、企業グループ内の一定の法人間で合併等が行われる場合の適格合併等の該当性を判定するための要件について、合併法人等の発行済株式の全部を間接に保有する関係がある一定の外国法人(②において「特定関係外国法人」という。)の株式を対価とする場合には、当該要件を満たさないこととする。

② 特定関係外国法人の株式を対価とする合併等が行われる場合において、その合併等が適格合併等に該当しないときは、その合併等の時に株主の旧株の譲渡益に対して課税することとする。

(5)外国税額控除における控除対象外国法人税の額の範囲等の見直し

わが国で所得と認識されない金額に対して課されるものとして外国税額控除の対象から除外される外国法人税の額に、内国法人に対する配当等の支払があったものとみなして課される一定の外国法人税の額を加えるほか、所要の措置を講ずる。

(6)租税条約の実施のための国内法の整備

① 租税条約の相手国等において国外転出に係る課税の規定の適用を受けた財産を譲渡した場合の二重課税調整

租税条約の相手国等の国外転出に係る課税の規定の適用を受けた居住者が、当該適用に係る財産の譲渡をした場合において、当該租税条約の規定により当該譲渡による所得の金額に係る所得税の額の計算について二重課税調整を行うこととされているときにおける事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、当該規定により課される外国所得税の額の計算において収入金額に算入することとされた金額をもって、当該財産の取得に要した金額とする等の措置を講ずる。

② その他

イ 租税条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とされる事業体(当該租税条約の相手国等において納税義務者として取り扱われないものに限る。)に対する当該租税条約の規定に基づくわが国の課税の取扱いを明確化するための措置を講ずる。

ロ 限度税率を定める租税条約の規定の適用がある譲渡収益に係る所得の金額について、限度税率により源泉徴収等を行うこととする。

ハ 国際運輸に運用される船舶内又は航空機内において行う勤務により受ける給与に対する租税条約の適用手続に関する規定の整備を行うほか、所要の措置を講ずる。

(地方税)

個人住民税、法人住民税及び事業税について、国税における諸制度の取扱いに準じて所要の措置を講ずる。

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*