これまで、アルメニア共和国との税務上の取り扱いは、今のロシア・NIS諸国の一部と同様に「旧ソ連との租税条約」が承継・適用されてきました。しかし、ついに新しいルールへの移行が予定されています。
今回は、令和8年(2026年)1月1日から適用される、投資所得(配当・利子・使用料)に対する課税の変更点について、速報としてまとめました。現地法人をお持ちの企業様や、アルメニア企業とライセンス契約等を結んでいる企業様は必見です。
1. 何が変わる? 源泉地国課税の大幅な軽減・免除
最大のアポイントは、配当、利子、使用料(ロイヤリティ)について、支払う側(源泉地国)で差し引かれる税金の上限税率(限度税率)が、大幅に引き下げられることです。
原則として、令和8年(2026年)1月1日以降、以下の通り変更されます。
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区分
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改正前(旧条約等)
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改正後(新ルール)
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配当
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15%
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免税(議決権保有割合25%以上・保有期間365日以上)<br>5%(その他)
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利子
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免税(政府受取等)<br>10%(その他)
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免税(政府受取等)<br>5%(その他)
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使用料
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免税(著作権)<br>10%(その他)
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5%
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※ 表中の「免税」や「%」は、源泉地国(所得が生ずる国)において課税できる上限の税率を示しています。
ポイント①:親子会社間の配当が「免税」へ
これまで15%の課税が基本だった配当について、一定の持株割合(25%以上)と保有期間(365日以上)を満たす親子会社間の配当であれば、**免税(0%)**となります。これにより、アルメニア子会社の利益を日本へ還流させる際の税コストがなくなります。
ポイント②:使用料(ロイヤリティ)は一律5%へ
IT企業などで特に重要なのが「使用料(ロイヤリティ)」です。 旧条約下では、文化的な著作権などは免税でしたが、工業所有権などは10%等の課税がなされていました。改正後は、これらが原則として**5%**に統一・軽減されます。
2. 条約の恩恵を受けるためには「届出書」が必須です
税率が下がったからといって、自動的に安くなるわけではありません。 この軽減税率や免税の適用を受けるためには、実務上、以下の手続きを忘れないようにしてください。
1. 「租税条約に関する届出書」の提出 支払日の前日までに、支払者(源泉徴収義務者)を経由して税務署へ提出する必要があります。
◦ 配当の場合:様式1
◦ 利子の場合:様式2
◦ 使用料の場合:様式3
2. 「特典条項に関する付表」の添付 新しい条約には、租税回避を防ぐための「特典条項」が含まれている可能性が高いです。その場合、届出書に加えて「特典条項に関する付表(様式17)」や「居住者証明書」の添付が必要になるケースがあります。
3. 注意! 手続きを忘れると原則税率で引かれます
もし、届出書の提出を忘れてしまった場合、日本の国内法に基づき**20.42%**の税率で源泉徴収しなければなりません(または相手国の国内法税率で引かれます)。 後から「還付請求書(様式11)」を提出して取り戻すことは可能ですが、手間と時間がかかります。
令和8年1月の適用開始に向け、アルメニアとの取引がある企業様は、社内の契約書や経理フローの再確認をおすすめします。
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