子会社株式簿価減額特例とは?M&A後の配当で注意すべき税務を解説

Q:子会社株式簿価減額特例とは、どのような制度でしょうか?

A:子会社から一定額を超える配当等を受けた場合に、その子会社株式の税務上の帳簿価額を引き下げる制度です。

子会社株式簿価減額特例は、M&Aなどで取得した子会社から配当を受けた後、その子会社株式を売却することによって税務上の譲渡損失を作り出すことを防止するため、2020年度税制改正で導入された制度です。

なぜ子会社株式の帳簿価額を減額するのか

例えば、日本法人が海外企業を買収して子会社化した後、その海外子会社に買収前から蓄積されていた利益を日本の親会社へ配当したとします。

外国子会社から受ける配当について一定の要件を満たす場合、その95%相当額が益金不算入となることがあります。

しかし、配当によって子会社の企業価値が低下したにもかかわらず、親会社が保有する子会社株式の税務上の帳簿価額がそのまま残ると、その後子会社株式を売却した際に、大きな譲渡損失が生じる可能性があります。

そこで一定の場合には、配当等のうち益金不算入となった金額等を基礎として、子会社株式の税務上の帳簿価額を引き下げることとされています。

これが「子会社株式簿価減額特例」です。

どのような場合に適用される?

原則として、親会社が50%超の特定支配関係を有する子法人から配当等を受け、その事業年度に受ける対象配当等の合計額が、一定の子会社株式の帳簿価額の10%相当額を超える場合に、本制度の検討が必要となります。

ただし、一定の適用除外要件があります。

代表的なものとして、次のようなものがあります。

① 配当等の金額が2,000万円以下の場合

一定の判定による同一事業年度内の対象配当等の合計額が2,000万円以下の場合には、原則として本特例の適用が免除されます。

② 10年を超えて支配している場合

親会社と子会社との特定支配関係が生じた日から、対象配当等を受ける日までの期間が10年を超える場合には、原則として適用除外となります。

③ 買収後に生じた利益から配当している場合

一定の要件を満たし、子会社化した後に生じた利益剰余金を原資としていると認められる場合には、適用除外や減額対象から除外できる場合があります。

このほか、国内子会社について一定の株主構成要件を満たす場合などにも適用除外となるケースがあります。

海外子会社だけの制度ではありません

この制度は海外子会社に限ったものではなく、一定の要件を満たせば日本国内の子会社についても対象となる可能性があります。

ただし、外国子会社については外国子会社配当益金不算入制度との関係があるため、海外M&Aや海外子会社から多額の配当を受けるケースでは特に注意が必要です。

令和6年度税制改正でも見直しが行われています

子会社株式簿価減額特例については制度創設後も見直しが行われています。

令和6年度税制改正では、特定支配関係が生じた後の利益剰余金から支払われたと認められる配当部分を減額対象から除外するための特例計算について、適用範囲が見直されました。

そのため、実際の適用判定では、単純に「配当額が多いから株式簿価を減額する」と判断するのではなく、

・子会社を取得した時期
・特定支配関係が生じた時期
・子会社株式の帳簿価額
・配当額
・配当原資となった利益剰余金
・買収前・買収後の利益の状況
・国内子会社か外国子会社か

などを確認する必要があります。

M&A・海外子会社からの配当は事前確認が重要です

子会社株式簿価減額特例が適用されると、将来その子会社株式を売却する際の譲渡原価が小さくなり、想定していた譲渡損が認められない、あるいは譲渡益が大きくなる可能性があります。

特に、

海外企業をM&Aで取得した後に多額の配当を予定している場合

には、配当を実施する前に税務上の影響を確認しておくことが重要です。

M&A・海外子会社に関する税務でお困りの方へ

辻国際税理士事務所では、海外子会社、海外M&A、外国子会社配当、国際税務に関するご相談に対応しています。

子会社からの配当や株式売却を予定しており、子会社株式簿価減額特例の適用について判断が必要な場合には、取引内容や財務資料を確認したうえで個別に検討いたします。

海外子会社・M&Aに関する税務について、お気軽にお問い合わせください。

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