RETIOメルマガ第174号より引用
◆◇◆ 最近の判例から ◆◇◆
[ サブリース契約と借地借家法]
サブリース契約には借地借家法第28条の適用がないとして求めた賃貸人の建物明渡し請求
が棄却された事例(東京地判 令元・11・26 ウエストロー・ジャパン)
1 事案の概要
X1(原告)、X2(原告、X1と併せ「X1ら」という。)が取締役をしている資産管理会社
X3(原告、X1らと併せ、「Xら」という。)は、平成16年まで 3住戸(本件各建物)を購
入後、サブリース会社Y(被告)との間で、本件各建物の賃貸借契約(本件各契約)を締結
した。
その後、本件各契約は、いずれも更新を繰り返し、平成27年8月4日に、X1らが、X3
から本件各建物を購入した後も、1住戸について平成28年4月26日付けで、他2住戸に
ついても平成29年4月12日付けで契約が更新された。
本件各建物の賃料の状況は、1住戸は平成29年9月から5か月間、転借人がいなかった
ため、Yから空室免責を理由に賃料の支払を受けなかった。また、他の2住戸も当初賃料は
21万8700円、16万4700円であったが、数回の減額があり、平成 27年4月22日には満
室想定家賃20万5000円、16万5000円の85%の保証家賃である17万4250円、14万
0250円に減額されていた。
X1らは、Yに対し平成29年7月24日に書面により、本件各建物の期間満了日をもって
更新せずに解約することを通知したが、Yは同期限経過後も本件各建物を占有していたた
め、X1らが、Yに対しサブリース契約には借地借家法第28条の適用はないとして、本件各
建物の明渡しと不法行為に基づく損害賠償(使用損害金)の請求として、本件各契約の終了
日後から明渡しまで、3住戸計52万5000円の支払いを求めて提訴した。
その後、Xらは、令和元年7月4日に陳述した準備書面において、紛争の早期解決を理由
に、本件各建物の1か月分の差額賃料の合計6万3250円を支払うことを提案した。
なお、X3とYが平成16年に賃貸借契約を締結した本件とは別の建物については、平成
19年3月頃、契約を解約したが、 Yから借地借家法第28条に基づく主張はなく、解約金や
立退料等の支払もなかった。
2 判決の要旨
裁判所は、次のように判示して、X1らの請求を全て棄却した。
本件各契約は、いずれもXらから本件各建物を賃借したYが第三者に転貸することを目
的とするサブリース契約であり、満室保証契約や滞納保証契約が一体化しているものであ
るが、いずれもXらがYに対して本件各建物を使用収益させ、YがXらに対してその対価
としての賃料を支払うものであるから、建物の賃貸借契約であり、借地借家法の適用の対象
になり、同法第28条の規定も適用されるから、本件各契約における自由な解約申入れの定
めは、借地借家法第30条により無効である。
借地借家法第28条の適用がある本件各契約の更新を拒絶するには、借地借家法第26条
第1項の通知のほかに、同法第28条の正当事由の具備が必要となる。
Xらの主張からは、相続対策として納税資金を捻出するために、本件各建物を可能な限り
高額で売却する必要があるため、賃借人や転借人のない状態で本件各建物を売却すること
を望んでいるものと解されるが、そのこと自体は、自己使用の必要性が大きいものとはいえ
ず、Xらが主張する他の事情も、借地借家法第28条の正当事由において考慮すべき事情と
して大きなものとはいえない。
一方、Yは、本件各建物を転貸することにより転貸料等の収入を得るサブリースの事業を
しているから、Yにとって建物賃借権が存在することは事業の根幹をなす重要なものであ
る。
そして、Yが本件各建物から安定的に収益を得ていたことが認められる。
もっとも、Yが本件各建物を使用する必要性が収益を得ることに尽きることも考慮する
と、借地借家法第28条の正当事由の有無を判断するに当たり、サブリースではない賃貸借
と比べて、財産上の給付をする旨の申出が、より大きな判断要素として考慮することができ
るものというべきである。
しかしながら、Xらが提供する立退料の金額は、6万円余にすぎず、本件各契約を解約す
ることにより喪失するYの経済的利益に比して余りに少額であるから、正当事由を補完す
るのに足りない。また、仮に、当裁判所が何らかの経済的な給付と引き換えに本件各建物の
明渡しを命ずる場合には、その給付に要する額は、Xらが提示した金額を大幅に上回るもの
とならざるを得ないから、当裁判所が何らかの経済的な給付と引き換えに本件各建物の明
渡しを命ずることは、Xらの意思に反するものであって、相当とはいえない。
また、Yが自由に解約ができる旨の内容の契約書を作成して契約を締結しながら、後にX
らの解約申入れが借地借家法に反する旨の主張は信義則に反するとのXらの主張も、本件
各契約における自由な解約申入れの定めが無効であるから、Yが借地借家法に基づく主張を
することが信義則に反するとはいえない。
以上によれば、Xらの本件各請求は、いずれも理由がないから、これらを棄却する。
3 まとめ
サブリース契約にも借地借家法の適用があると、最三判 平15・10・21 RETIO56-66に
おいて判断されており、本件においても同様に判断がされています。
そのため、サブリース会社に対し明渡しを求められるかは、借地借家法第28条に規定さ
れている「正当事由」により判断されることになりますが、本件においては、貸主側の自己
使用の必要性が大きくないことから、正当事由が認められなかったことは妥当といえるで
しょう。
なお、自宅の補修費用捻出という理由で、正当事由が認められた事例(東京地判 平27・
8・5 RETIO103-122)と、サブリース会社の事業としての使用目的のほうが重いとして棄
却された事例(東京地裁 平24・1・20 RETIO88-118)があるので参考にしてください。