確定申告のシーズンが近づくと、不動産オーナーの皆様は「経費の計上」や「控除」について頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。 今回は、実務でも誤りやすいポイントや、意外と知られていない不動産所得の取り扱いについて、最新の税務情報をもとに解説します。
1. 「事業的規模」じゃなくても65万円控除が使える裏ワザ?
不動産所得の青色申告特別控除(最大65万円)を受けるには、一般的に「5棟10室基準」などの事業的規模であることが必要と言われています。しかし、実は例外があるのをご存知でしょうか?
もしあなたが、不動産賃貸業以外に**「事業所得」**(副業のビジネスなど)を持っていた場合、話が変わります。 税務上のルールでは、不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいれば、65万円控除の要件を満たすとされています。つまり、事業所得があれば、不動産所得の規模が小さくても(事業的規模に至らなくても)、不動産所得から65万円控除を差し引くことが可能なのです
しかも、事業所得が赤字であってもこの要件は満たされます。その場合、不動産所得の黒字から控除額を差し引くことができます。
2. 「申告不要」の勘違いに注意!サラリーマン大家の落とし穴
給与所得者(年収2,000万円以下)で、給与以外の所得が20万円以下の場合は確定申告が不要というルール(20万円ルール)は有名です。 しかし、これには注意が必要です。
例えば、本来の不動産所得が70万円あり、そこから青色申告特別控除(65万円)を引いて所得が5万円になったとします。「20万円以下になったから申告しなくていいや」と思うかもしれませんが、これは間違いです。
65万円の青色申告特別控除を受けるためには、「確定申告書にその旨を記載して提出すること」が適用要件となっています。つまり、申告をしなければ控除が適用されず、所得は70万円のままとなり、結果として申告義務が生じてしまうのです(無申告扱いになるリスクがあります),。
「控除を使って20万円以下になる」場合は、必ず申告が必要です。
3. 修繕費か?資本的支出か?迷いやすい判断基準
不動産の経費で最も判断に迷うのが、リフォームや工事代金が「修繕費(一括経費)」になるか、「資本的支出(減価償却)」になるかです。
修繕費として認められるもの(例)
• 通常の維持管理や原状回復のための費用(畳の表替え、壊れたガラスの交換など)
• 災害により被害を受けた資産の原状回復費用
• 約3年以内の周期で行われる修理や、20万円未満の少額な修理
資本的支出となるもの(例)
• 避難階段の取り付けなど、物理的に付加する工事
• 用途変更のための模様替え
• より高品質・高性能な部品への取り替え(通常の取替費用を超える部分)
特に、災害時の対応として、被災前の効用を維持するための補強工事などは、法人が修繕費として経理していれば認められるという特例もあります。判断に迷う場合は専門家への相談をお勧めします。
4. 海外不動産投資の節税はもうできない?
かつて富裕層の間で流行した「海外の中古不動産を買って、多額の減価償却費で赤字を作り、給与所得と相殺して節税する」というスキームは、税制改正により封じられています。
令和3年以降、個人の国外中古建物から生じる不動産所得の損失(減価償却費に相当する部分)は、「生じなかったもの」とみなされます。つまり、給与所得など他の所得との損益通算ができなくなりました,。 この「なかったことにされた損失」は、将来その物件を売却する際に、取得費(経費)として精算することになります。
——————————————————————————–
不動産所得の計算は、知っているだけで得をする制度もあれば、知らないとペナルティを受ける落とし穴もあります。ご自身の状況に合わせて、適切な申告を行いましょう。
不動産に関する税金に関するお問い合わせ