◆◇◆ 最近の裁判例から ◆◇◆【宅建士の名義貸し】

RETIOメルマガ第186号より引用

◆◇◆ 最近の裁判例から ◆◇◆

                  

【宅建士の名義貸し】

原野商法事件において、宅建業者に名義貸しを行った専任の宅地建物取引士に、共同不法

行為責任による賠償責任を認めた事例(東京地判 令元・7・16 消費者法ニュース121-225)

 

1 事案の概要

平成29年10月頃、X(原告)は、A社(宅建業者)の従業員を名乗る者から、電話によ

り、所有するa市の土地(本件土地ア)を購入したいとの勧誘を受けた。Xは、検討の上、

A社に売却することとし、同年11月22日、未了であった上記各土地の抵当権抹消登記手

続をした。

平成29年12月7日、Xは、自宅を訪れたA社のBと名乗る者との間で、A社に対し、本

件土地アを合計800万円で売却する旨の売買契約を締結した。

その際、Xは、A社の所有するb市の土地(本件土地イ)を合計838万円で購入する売買

契約書にも署名押印させられていた。BはXに対し、差額に相当する38万円の支払を求め、

Xはこれに応じて支払った。

その後、Xは、A社の従業員を名乗る者から節税名目で金銭の支払を要求され、これに応

じて預金300万円を払い戻そうとしたが、金融機関の職員に詐欺を疑われたことを契機と

して、A社による詐欺行為が発覚した。

平成30年3月16日、Xは、A社から、売買契約書等の関係書類の送付を受けた。これに

より、Xは、A社から本件土地イを購入させられていた事実を認識した。

平成30年4月21日、Xは、A社に対しては本件土地イの抹消登記手続を、A社、その代

表者及びA社の専任宅建士であるYに対しては、共同不法行為に基づく弁護士費用を含む

損害金41万円余等の支払を求める本件訴えを提起した。

本件訴えに対し、A社及びその代表者は、口頭弁論期日に出頭せず、平成30年12月21

日、当裁判所は、A社及びその代表者に対し、Xの請求を認容する旨の判決が言い渡され、

同判決は確定した。

XのYに対する訴えにおいて、Xは、

(1)A社は土地売買のための手続費用であるなどと虚偽の説明をして、土地を購入する意思

のないXから38万円を詐取したのであるから、Xに対し不法行為責任を負う。

(2)Yは、A社の宅建士として、A社が宅建業の免許付与を受けて事業を行う上で必要不可

欠な存在であり、A社が行っていた取引をみれば、原野商法詐欺の取引であることは容

易に認識できた。Yは、A社と共謀して詐欺を行ったか、宅建士の資格を名義貸しして、

A社の詐欺行為を容易にしたのであるから、A社と共に共同不法行為に基づく損害賠

償責任を負う、と主張した。

 

2 判決の要旨

裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を認容した。

(1)不法行為の成否について

認定事実によれば、A社は、Xに土地を購入する意思がないにもかかわらず、本件土地イ

を購入したかのような外観を作出し、Xから38万円を詐取した事実が認められる。

したがって、A社はXに対し不法行為責任を負う。

次に、本件土地アに係る不動産売買契約書及び本件土地イの不動産売買契約書の末尾の

各宅地建物取引士欄には、Yの記名、登録番号及びY名義の印影があるものの、Yが本件土

地ア、イの各取引に宅建士として関与した事実は認められず、YがA社と共謀して詐欺行為

をしたとは認められない。

しかし、他方で、Yは、A社との間で、5万円という安価な報酬で同社の専任の宅建士に

就任することを承諾し、5万円を受領したものの、その後、同社の専任の宅建士として稼働

した事実は認められない。

これらの事実によれば、Yは、A社との間で、専任の宅建士として稼働しないことを前提

に、宅建士の資格につき名義貸しをしたものと認められる。

そして、宅地建物取引業法が、15条において、宅建士は宅地建物取引業の業務に従事す

るときは、宅地又は建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護及び円滑な宅地又は

建物の流通に資するよう、公正かつ誠実にこの法律に定める事務を行わなければならない

と規定し、15条の2において、宅建士は、宅建士の信用又は品位を害するような行為をし

てはならないと規定していること、68条及び同条の2が、宅建士による名義貸しについて、

都道府県知事が必要な指示や登録を消除につき規定していることからすると、宅建士がそ

の資格を名義貸しして、購入者等の利益に反する行為をすることが許されないことは明ら

かというべきである。

本件において、YがA社の専任の宅建士に就任することを許諾し、名義貸しを行ったこと

は、A社が宅建業の免許付与を受け違法な営業活動を継続させ、Xの利益に反する詐欺行為

を容易にしたものであり、A社のXに対する詐欺行為を幇助したものと認められる。

したがって、Yは、A社と共に、Xに対し、共同不法行為責任を負う。

(2)Xの損害額について

A社とYの共同不法行為により、Xは38万円を詐取されたものと認められるから、Xは

同額の損害を被ったと認められる。また、本件に相当する弁護士費用は3万円余と認めるの

が相当である。

よって、Xの損害額は合計41万円余と認められる。

 

3 まとめ

専任の宅建士は、宅建業を営む事務所に常勤して従事していることが必要であり(宅地建

物取引業法の解釈・運用の考え方第31条の3第1項関係3)、宅建士が宅建業者に専任の宅

建士の名義貸しをすることは、宅建業法15条、15条の2、68条、68条の2違反により行

政処分の対象となるとともに、民事上も宅建業者に不法行為があった場合には、共同不法行

為責任として認められる可能性があることを再度確認する必要があります。

なお、本件同様に宅建士の名義貸しによる賠償責任が認められた事例として東京高判平

31・1・9 RETIO115-094、秋田地判大曲支判平29・9・22 RETIO114-114などがあります。

 

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