RETIOメルマガ第184号より引用
★☆《賃借建物で借主が目的事業に使用できないトラブル》★☆
RETIOのメールマガジンをご覧いただいている皆様、こんにちは。
近頃、建物の事業用賃貸借において、「契約後に、消防法や建築基準法等の問題から、建
物が借主の事業目的に使用ができないことが判明し、借主が契約を解除して、既に支払った
賃料や諸経費、内装工事費用等を、貸主や媒介業者に損害賠償請求をする」というトラブル
がよく見られるようです。
<最近の裁判例にみられるトラブル>
(1) マンションの1階店舗を、飲食店として賃借したところ、消防法・建築基準法の関係
から厨房排気ダクトを設けることができず、借主の店舗営業が不可能であったため、借主
は契約を解除し、貸主・媒介業者に対して損害賠償を求めた。裁判所は、賃借建物におい
て借主が希望する営業ができるかは、営業内容を具体的に知る借主自身が調査すべきも
のとして借主の請求を棄却した。(R3.9.15 東京高裁 RETIO124-166)
(2) ペット・飼育用品の販売を目的に地階部分の元飲食店舗を賃借したところ、排煙の問
題から用途変更ができず、借主の目的使用ができなかったため、借主は契約を解除して、
媒介業者に対し、用途変更に関する調査説明義務があった等として損害賠償を求めた。裁
判所は、用途変更が可能と媒介業者が装った事実は認められないとして請求を棄却した。
(R3.4.12 東京地裁)
(3) 地下1階の店舗をセントラルキッチン兼店舗として賃借したところ、排気ダクトの風
量値の上限から、その目的に使用不可能な物件であったため、借主は契約を解除し、貸主・
媒介業者に損害賠償を求めた。裁判所は、「貸主には借主が目的とする店舗として使用さ
せる義務がある、媒介業者には借主の目的使用が可能な物件を紹介すべき義務がある」と
する借主の主張は認められないとして請求を棄却した。(R3.3.26 東京地裁)
(4) 共同住宅の一室を、社会福祉サービス事務所の目的で賃借したところ、建物が複合用
途対象物になることから、建物全体に自動火災報知設備(約500万円)の設置が必要なこ
とが判明、借主は貸主にその設置を要求したが断られため退去し、貸主・媒介業者に損害
賠償を請求した。裁判所は、賃貸借契約上、貸主に自動火災報知設備の設置義務があると
は認められない、借主の目的使用に当該設備の設置が必要であることを、媒介業者は容易
に知り得るものではなかったとして請求を棄却した。(R1.7.4東京地裁 RETIO119-150)
このようなトラブルが見られる要因ですが、
ア 賃借する物件で借主が目的とする使用ができるかについての調査は、目的使用を行う
借主自身が行う必要があること
イ 建築基準法や消防法等の公法規制上の問題、あるいは建物の設備上の問題等から、借主
が目的とする用途に建物が使用できない場合(リスク)があること
ウ イのリスク回避のため、借主は契約前に建物が目的使用できることを、建築基準法・消
防法などの専門的な知識を有する建築士等に依頼し確認をしておく必要があること
エ 宅建業者による重要事項説明は、一般的な宅建業者が通常行うべき調査レベルによる
ものであって、建築基準法・消防法などの専門な知識を有する建築士等が調査をしないと
判明しないものについてまで、調査・説明がされる(できる)ものではないこと
を、借主が理解をしていない場合があるためと思われます。
賃貸借契約を締結後、建築基準法・消防法等の問題で、借主が建物を目的使用できないこ
とが判明し、契約を解除せざるを得ない事態に陥った場合、その原因が借主の確認不足であ
ったとしても、借主には多額の損失が発生することになりますし、損害を負ったことで、貸
主・仲介業者に損害賠償を求めるトラブルも、裁判例に見られるように発生しています。
このようなトラブル回避の観点から、事業用賃貸の媒介を行う媒介業者においては、借主
に事業用賃貸借物件を紹介するに際して、上記ア~エについて借主が理解をしているか、確
認・アドバイスを行っておくことが、重要なポイントになるように思われます。(アドバイ
スを行ったことなどについては、営業記録に記録をしておきます。)
ところで、前述エの「一般的な宅建業者が通常行う調査」を漏らしたため、媒介業者が賠
償責任を負うことになった事案も時々見られます。特に、下記のような調査は漏れやすいよ
うなので、ご注意をしていただけたらと思います。
・用途地域、条例等による建物の使用用途の制限
・区分所有建物である場合に、管理規約による建物の使用制限の有無
・建物が違反建築物ではないか(容積率オーバーはないか)、の確認、確認済証と検査済証
の確認(取得がされていないと、用途変更申請は困難です)
以上、最近裁判例で見られる、事業用賃貸借において借主の目的使用ができなかったト
ラブルについてご紹介をさせていただきました。
当機構としては、様々な観点から、国土交通省との連携を図りつつ、今後とも不動産取
引をはじめとした不動産に関する調査研究を推進してまいりたいと存じます。