RETIOメルマガ第183号より引用
★☆《賃貸借 残置物の処理等に関するモデル契約条項について》★☆
(モデル条項策定の趣旨)
最近、賃貸住宅の賃貸人が単身の高齢者に建物を貸すことを躊躇して、高齢者が建物を借
りようとしてもなかなか借りられないとういう問題が発生しています。
これは、賃貸借契約の継続中に賃借人である高齢者が死亡した場合、相続人の有無や所在
が分からなかったり、相続人との連絡が付かなかったりすると、賃貸借契約の終了や物件内
の残置物の処理が難しくなるリスクを賃貸人が感じていることが主な理由と考えられます。
そこで、このようなリスクを減らし、単身の高齢者が賃貸物件に入居しやすくする観点か
ら、このモデル契約条項が公表されることとなりました。
(契約条項の概要)
このモデル契約条項は、60歳以上の単身高齢者が賃借人となる場合を想定して、次の2
つの条項から構成されています。
1 賃貸借契約の解除事務の委任に関するモデル条項
賃貸借契約中に賃借人が死亡した場合に、合意解除の代理権、賃貸人からの解除の意思
表示を受ける代理権を受任者に授与する条項
2 残置物の処理事務の委託に関するモデル条項
賃貸借契約中に賃借人が死亡した場合に、賃貸借物件内に残された動産類(残置物)の
廃棄や指定された送付先への送付等の事務を受任者に委託する条項
受任者については、賃借人は次の順番に従い選任することとなります。
(1)賃借人の推定相続人
ただし、推定相続人を受任者とすることが困難な場合(所在不明や受任意思がない場
合等)は次のとおりです。
(2)居住支援法人・居住支援を行う社会福祉法人
(3)賃貸人から委託を受けて物件を管理している管理業者
(契約条項の効力)
このモデル契約条項に沿って賃借人と解除事務受任者または残置物事務受任者で契約を
交わせば、賃借人が死亡した場合、各受任者等は次のことを行うこととなります。
1 死亡事実の通知
賃貸人は、解除事務受任者に賃借人の死亡事実を通知します。また、残置物事務受任者
が委任者の死亡を知った場合には、ただちにその旨および受任事務内容を委任者死亡
時通知先に通知します。
2 解除事務受任者の義務
解除事務受任者は、賃借人または賃借人の地位を承継したその相続人の意向を考慮し、
その利益のために委任事務を処理します。
3 賃貸借契約の解除
賃貸人と解除事務受任者は、合意により賃貸借契約を解除することができます。賃貸借
契約が終了した場合には、賃貸人は、残置物事務受任者にその旨を通知します。
4 物件内への立ち入り
残置物事務受任者は、物件内に残置された物の廃棄等を行うため、物件に立ち入ること
ができます。物件が施錠されている場合には、賃貸人に協力を求めることができます。
5 残置物の状況確認・記録
残置物事務受任者は、廃棄・送付・換価・保管のために搬出する前の残置物の状況を、
第三者立会いの下、確認・記録しておきます。
6 残置物の3分類
残置物は、賃借人が指定する動産は「指定残置物」として指定送付先に送付し、指定残
置物以外の動産は「非指定残置物」として一定期間経過後に廃棄します。金銭(換価し
た代金を含む)については、相続人に送金します。
7 非指定残置物の廃棄等
保管に適したものについては、賃借人の死亡から契約で定められた期間(モデル条項で
は3ヶ月)経過後に、委任者死亡時通知先に2週間前までに通知のうえ、廃棄します。
また、価値等に照らし廃棄が適切でないと思われる物を発見した場合には、委任者死亡
時通知先に2週間前までに通知のうえ、換価可能なものはできるだけ換価するように
努めます。なお、換価代金は賃借人の相続人に返還します。
食料品など保管に適さないものについては、ただちに廃棄します。
以上、昨年6月に国土交通省と法務省から公表されました「残置物の処理等に関するモデ
ル契約条項」等について、主な項目をご紹介させていただきました。
モデル条項はコメントを含め詳細に規定されており、大家さん向けのガイドも添付され
ていますので、是非、国土交通省のホームページ等でご確認ください。
住宅:残置物の処理等に関するモデル契約条項 – 国土交通省 (mlit.go.jp)
当機構としては、様々な観点から、国土交通省との連携を図りつつ、今後とも不動産取引
をはじめとした不動産に関する調査研究を推進してまいりたいと存じます。