相談・紛争事例54

財団法人不動産適正取引推進機構 相談・紛争事例54より引用します。

 宅地建物の売買に際し、手付放棄による解除をする場合の宅建業法上の規制や参考とす
べき主な判例について教えて欲しいという相談が宅建業者から寄せられました。
 そこで、手付金の性格や主な判例について、以下のとおり説明しました。

 手付は、売買契約に際し当事者の一方が相手方に交付する金銭で、代金の一部支払いの
性格を有するほか、
 (1)契約成立の証拠として授受される証約手付
 (2)契約上の債務を履行しない場合に、違約金として没収しうる違約手付
 (3)買主はこれを放棄し(手付放棄)、売主は手付の倍額を返還(手付倍返し)すれば、
    契約を解除できる解約手付
等の性質を兼ね備えるものとして、授受される金銭のことを言います。
 授受された手付がどの性格を有するかは、基本的には当事者の意思で決まるものですが、
宅建業者が自ら売主となる売買契約において授受される手付については、消費者保護の徹
底を図る観点から、宅建業法第39条第2項により、(3)の性格、すなわち解約手付の性格を
有することとされています。
 また、手付放棄による解除は、当事者の一方が履行に着手するまでに申し出る必要があ
ります(民法557条)。これに関する判例としては、(1)解除を申し出た者が履行に着手して
いる場合であっても、その相手方が履行に着手するまでの間は手付放棄による解除権が行
使できるとした判例(最判昭40.11.24民集19巻8号2019頁)です。
しかし、売主業者が「手付解除期日」をつけた契約を締結した事案で、売主が「履行の
着手」をしたにも関わらず、手付解除期日が履行の着手より後の期日であったことから、
履行の着手後の買主の手付解除が認められた判例(名古屋高判平13.3.29)もありますの
で、売主には不利に働く手付解除期日はつけないことが賢明であるといえるでしょう。
  なお、履行の着手については、法律的な表現では、(2)「客観的に外部から認識しうるよ
うな形で履行行為の一部をなし、または履行の提供をするために欠くことのできない前提
行為をした場合(最判昭48.11.24)」ということになります。そして履行の提供のための
単なる前提行為は履行の準備行為とされ、履行の着手には該当しません。

 したがって、例えば宅建業者が売主になる売買契約において、単なる準備行為なのにも
関わらず履行の着手に当たるとして、買主は手付解除できないとか、売買契約を締結した
日から一定期間を経過すると買主が手付解除できないなどの特約は、法39条第2項及び、
47条の2第3項、施行規則16条の12第3号に抵触することになりますので、くれぐれも
慎重なご対応をお願いします。

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