相談・紛争事例85

財団法人不動産適正取引推進機構 相談・紛争事例85より引用します。

最近の相談で私道の通行に関するものがありましたので取り上げてみました。
 私道にもいろいろな態様がありますが、今回対象となった道路は42条2項道路に指
定された私道でした。42条2項道路は、建築基準法の道路の規定が適用される前から
存在する道路のうち、幅員4m未満の道路をいい、建物再建築時にはセットバックの義
務を負うこととなります。
 ご相談の内容は、当該道路に関し、所有権持分を全く持たないものが自動車で通行で
きるかといった趣旨です。
「42条2項道路という建築基準法上の道路となっているのであれば自由に通行でき
るのでは」と考えた方もいらっしゃれば、「確かに42条2項道路に指定されているが、
他人の土地であり自由に通行できるのは疑問」と考えた方もいらっしゃると思います。
 この点、民法や裁判所判例では以下の通りとなっています。
1)42条2項道路となっていることで所有者でない者がその道路を通行する権利を主
  張できるか?
 →42条2項道路であるだけでは、当然に通行する権利を主張することはできません。
  この点、最高裁判決の考え方を要約すると以下のようになります。

・2項道路や位置指定道路は、建築基準法上の道路であり、その道路の範囲内では
 所有地であっても建物等を建築してはならないという公法上の義務を所有者は
 負う。
・このような建築基準法上の規制の結果として、通行する権利を持たない第三者で
 あっても、その道路を通行することができる。(これを反射的効果といいます)
・この場合、仮に私道所有者が、特定の第三者に対し通行することを拒否又は妨害
 した場合、その第三者は通行する権利を有するわけではないので、通行又は妨害
 排除を請求することはできない。

権利を持たない以上、仮に通行を禁止されてもその排除を求める事はできないとい
うことです。

2)そうすると、他の土地に囲まれた土地の場合、どこにも行けなくなるのではないか?
 →民法では、このような土地を対象に「囲繞地通行権」の規定(210条1項)を置き、
  他の土地を通行する権利を認めています。なお、この規定により通行権が認めら
  れるには、「通行者にとって必要であり、かつ通行される土地のために損害が最も
  少ないものを選ばなければならない」(211条1項要約)とされており、通行者が
  任意に通行する場所を選べるものではありません。ちなみに、ここでいう「他の
  土地に囲まれて公道に通じない土地」には、「物理的に公道に通じていたとしても、
  土地の形状・面積・用途などを考慮してその土地に相応した利用が困難な場合」を
  含むと解されています。
  また、そもそも私道所有者との間で通行に関する契約書を締結すれば、その契約
  を根拠として通行を主張することは可能です。売買時に買主から要求される「私道
  に関する通行・掘削承諾書」等も、これに類するものです。

3)囲繞地通行権もなく、通行に関する契約も締結していない場合で、通行を妨害され
  た場合、これを排除することはできないのでしょうか?
 →私道の通行が反射的効果として認められているにすぎない場合でも、妨害排除請
  求が認められた判例があります。
  平成9年12月18日の最高裁判決で、以下の通り判示しております。
   「当該道路を通行することに日常生活上不可欠の利益を有する者は、同道路の通
    行をその敷地の所有者によって妨害され、または妨害される恐れがあるときは、
    敷地所有者が上記通行を受忍することによって、通行者の通行利益を上回る著
       しい損害を被る等特段の理由がない限り、敷地所有者に対し上記妨害行為の排
       除及び将来の妨害排除の禁止を求める権利を有するというべきである。」
     必ずとは言えませんが、日常生活上不可欠の利益を有すると認められれば、妨害排
     除の請求が認められることがあります。

 実務上、私道の通行に関しては、徒歩の通行よりも自動車による通行を巡って争いに
なることが多いと思われます。徒歩による通行が認められた場合でも、当然に自動車に
よる通行が認められるとは限りませんのでご注意ください。

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