◆◇◆ 最近の判例から ◆◇◆[ 売買契約及び手付解除期限条項の有効性]

RETIOメルマガ第176号より引用

◆◇◆ 最近の判例から ◆◇◆

                  

[ 売買契約及び手付解除期限条項の有効性]

 

1 事案の概要

平成21年3月、X(原告:宅建業者)は、Y(被告:管理組合法人)が管理する共同住

宅(本件マンション)の地下駐車場部分(本件駐車場)の共有持分17分の16とP号室を

前所有者より購入した。

Xは、同年10月に、本件駐車場の区分所有権に基づいて、Yに対し、(1)契約者以外の本

件駐車場への立ち入りの禁止、(2)契約者以外の者が事故に遭遇した場合、Yの責任で解決

する義務があることの確認、(3)不法行為に基づく損害賠償請求等の支払を求める訴訟を提

起したが、いずれも却下された。

Y代表者は、平成29年11月頃、本件駐車場が売りに出ていることを知り、新買主とト

ラブルになることを恐れ、Yにおいて本件駐車場を購入することを考えて、Yの理事2人

に連絡したが、同意は得られず、理事会も開催されなかった。

Y代表者は、同年11月28日に、Xに本件駐車場の購入希望を伝えると、別の不動産業

者が購入の意向を示しており、決済が12月の予定であるとのことだった。

そこで、翌日の11月29日に、Y代表者は、Xを訪れ、本件駐車場の売買代金を9,980万

円とすることに合意し、Y代表者の個人資金100万円を手付金としてYに交付し、売買契

約(本契約)を締結した。その際、Yは、Xから重要事項説明書の交付を受けておらず、

その説明も行われなかった。

<本契約の概要>

・売買代金:9,980万円(外税)、手付金:100万円、残金決済日:12月末日限り

・手付解除期間:契約締結日から5日間

・違約金:売買代金総額の20%

 

Y代表者は、同年12月5日、Yの理事を招集し、経緯を説明した上で本契約締結につい

て承諾を得ようとしたが、本件マンションの管理費の積立金が9,000万円前後で売買代金

に満たず、ローン条項がないため、理事会として認められないとの指摘を受けた。

Y代表者は、ローン条項について、Xとの間で覚書を交わそうと考え、弁護士に相談して

覚書案を作成し、Xに相談したが、覚書の締結を断られた。その後、Y代表者は、金融機関

7 行を回ったが、いずれも融資を断られ、Xから通知書が届いたため、他の理事と相談して、

YからXに対して、手付放棄による契約解除の通知を行った。

Xは、Yに対し、売買契約について理由なく残代金支払期限を徒過したとして、違約金及

び遅延損害金の支払を求め、本訴を提起した。

 

2 判決の要旨

 

裁判所は、次のとおり判示し、 Xの請求を棄却した。

 

(本契約の有効性)

Yの理事会や総会において本契約の締結について承認決議がなされたと認めるに足りる

証拠はなく、Y代表者は、理事会や総会の決議を経ずに、本契約を締結していることから

すれば、本契約は、権限を有しないY代表者により締結されたものとして、無権代理によ

り本契約は無効である。

Xは、宅建業者であるから、本契約の締結にあたっては高度の注意義務が課されている

といえ、本契約の締結にあたり、Yの理事会決議や総会決議の有無について、Y代表者の

発言を漫然と信じたということであれば、過失があるといわざるを得ない。

したがって、Y代表者が本契約を締結するについて権限があると信ずべき正当な理由が

Xにあったとは認められず、表見代理は成立しない。

 

(手付解除の有効性)

宅建業者は、自らが売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領した

ときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄して契約の

解除をすることができる(宅建業法39条2項)が、同条 2項の規定に反する特約で買主に不

利なものは無効とされている。そして、Xは宅建業者であり、契約日から5日以内と限定

した本契約の手付解除期限条項は、買主に不利な条項であるから、無効である。

Xは、5日間という期間は、Y代表者も納得していたと主張するが、宅建業法の定めは

買主保護の観点から、特に宅建業者が売主の場合、手付解除期間を短くする合意があった

としてもそれを無効とする規定であるから、仮にY代表者が納得していたとしても有効と

なるものではない。

そして、Yは、平成29年12月28日付の内容証明郵便により、手付金 100万円を放棄して

本契約を解除する旨の意思表示をしているから、この時点で、本契約は手付解除されたも

のと認めることができる。Xは、12月28日の手付放棄解除の時点で、Xが「履行の着手」

をしていたと主張するが、本契約のように制限物権のない物件の売買においては、予め制

限物権を解除しておくといったような準備行為自体しえないことから、Xの主張は採用で

きない。

 

3 まとめ

本判決では、売主が宅建業者であるにもかかわらず、契約日から5日以内と限定した契

約の手付解除期限条項が、宅建業法第39条第3項により、無効と判断されています。

裁判所の判示にあるように、宅建業法は、買主保護の観点から、宅建業者が売主の場合、

手付解除期間を短くする合意があったとしても、それを無効とする規定なので、買主が納得

していたとしても有効ではないと判断されることになりますし、行政実例では、手付解除期

限条項を設けた宅建業者(売主・媒介)に対する行政庁の処分事例も見られます。

宅建業者は、自らが売主となる取引においては、宅建業法の定めに従い、買主保護を念頭

に置いて、不動産取引の条項等の取り決めを行うことが重要です。

本事案と同様に、売主業者の手付解除期限特約が宅建業法違反により無効とされた事例

として東京地裁 平28.10.11 RETIO117-116がありますので参考にしてください。

 

 

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