RETIOメルマガ第184号より引用
◆◇◆ 最近の裁判例から ◆◇◆
[用途制限の調査説明義務]
収益物件の用途制限について必要な説明はなされていたとして、買主による損害賠償請求
が棄却された事例(東京地判 令2・10・23 ウエストロー・ジャパン)
1 事案の概要
買主X(個人)は、平成29年4月27日、売主Y1(個人)が所有する地下1階付地上11
階建てマンション1棟(延床面積4989㎡)を投資用収益物件として12億3000万円で購入
契約し、同年5月18日に引き渡しを受けた。
本件売買は、Xの兄で、自ら宅建業者の代表者を務めるAがXの代理人として主導した。
本件建物の1階部分(821㎡)は、東西の両面で公道に接し、各々の入り口のシャッター
を下ろすことが出来るようになっており、その内部はコンクリートの壁や柱によって区画
が仕切られていたほか、かつてのテナントである大手ビール会社の関連会社が設置した冷
却用の空調ダクトが残置されていた。なお、売買契約当時は空室の状態であった。
本件建物は、地下1階を駐輪場、1階部分の約8割方を駐車場の用途に供するものとして
建築確認申請することにより容積率規制を満たしていたため、駐車場とした部分を駐車場
以外の用途で利用することは、建築基準法上の容積率の規制に違反する物件であった。
売買契約前に売主側の媒介業者Y2がXに提供したレントロール(賃貸借状況一覧表)で
は、空室であった1階部分の用途は記載されていなかったが、その想定賃料は過去の倉庫等
としての賃貸実績に基づき月額140万円となっていた。
Xは、平成29年12月、本件建物の1階部分を倉庫業者に賃貸する契約を締結したが、そ
の後、当該倉庫業者より、1階部分の倉庫の間仕切り工事について建築確認が得られず、倉
庫業法上、適法に営業倉庫として利用できないとのクレームを受けて合意解約した。
Xは、Y1・Y2に対して、1階部分の用途制限の説明義務違反等を主張して、適切な説明が
あれば行っていた筈の代金減額交渉等の機会損失による損害など、1億円余の損賠償請求訴
訟を提起した。
2 判決の要旨
裁判所は、次のように判示して、Xの請求を棄却した。
Xの代理人であるAは、本件物件以外にも5、6棟の物件を収益物件として購入し、管理
していた経験があり、用途といった法律用語の一般的な意味合いについて理解していたと
いえる。また、X側には、買主側の媒介業者であるB社や、宅地建物取引士であるCがつい
ており、適時に専門的な助言等を得ることができる状況にあった。
本件売買契約書及び重要事項説明書の特約条項には「マンション竣工図によると1階の
用途は事務所 駐車場となっております。」との記載があり、また、Y2から提供された本物
件の面積表や設計概要書等を含む竣工図には、容積率の計算過程等が明確に示されている
ことから、Aにとって本件建物の1階部分が駐車場として容積率対象面積から控除されてい
ることは容易に認識できた。
したがって、Aは、本件契約時点において、少なくとも、本件建物の1階部分の用途が事
務所、駐車場とされていることを認識し、その法的意味合い(倉庫として法的に問題なく利
用するためには用途変更を要すること。)も理解していたものと認められる。
なお、本件物件を倉庫として利用することには、建築基準法及び倉庫業法上の問題がある
ことからすれば、このようなY2の仲介業務の適否自体について疑問がないとはいえないが、
これはA及びXに対する説明義務違反の問題とは別論である。
したがって、Y2は、本件契約時点において必要とされる本件物件についての説明や資料
の提供を尽くしていたということができ、本件用途制限の存在に関して故意による欺罔行
為をしたとはいえず、過失による説明義務違反をしたということもできない。
また、売主Y1の固有の不法行為責任についても、Y2が本件物件について必要とされる説
明を尽くしていたことから、Y1が負う説明義務も果たされているものといえ、本件用途制
限に関する説明についてY1は何ら法的責任を負わない。
3 まとめ
容積率の算定において、駐車場は、敷地内の建築物の延べ床面積の1/5を限度として延べ
床面積に不算入とすることができ(建築基準法施行令第2条1項4号但書、同条3項)、こ
の特例を活用して容積率限度一杯で建築確認申請を行うケースが多くありますが、駐車場
よりも賃料を多くとれるとの理由から竣工後に事務所や倉庫仕様に改築すると、容積率制
限を超過した違法建築物となり、用途変更申請も認められなくなります。
宅建業者としては、このようなケースが多いことを念頭において、建築確認申請時と異な
る用途仕様に改築・使用されているケースでないか、また、建築基準法上違法状態にないか
を設計図書等で確認し、説明することが紛争防止のために重要です。
このような物件の売買について媒介業者の説明責任を巡って争われた事例として、「1階
が駐車場として建築確認等を受けていることを説明せず、建物図面を交付することもなか
った」として、債務不履行責任を認めた事例(東京地判令2・2・18 RERTIO122-158)や、
「本件建物が建築確認申請時には、車庫とする床面積が98.66㎡であることを理由に容積
率の緩和を受けていた事、売買契約締結時には、本件建物に車庫部分が存在しないため、増
改築、再建築の場合には、現在と同規模の建築物は建築できない場合があることを、重要事
項説明書に記載し、説明している」として媒介業者が説明責任を果たしていたと認定した事
例(東京地判平25・3・6 RERTIO93-154)などがあります。