RETIOメルマガ第99号 今日の視点

RETIOメルマガ第99号より引用しております。

★インターネットによる重要事項説明について

 

政府のIT戦略本部(本部長安倍首相)は2013年末国土交通省に対して不動産取引時の

重要事項説明や契約書面の電子化を検討するように求めました。インターネットをはじめ

とした情報通信技術は広く国民に浸透し、電子商取引の増加などを踏まえれば、不動産取

引でも情報通信技術を一層活用すべきという指摘は理解できます。他業界を見ても、2001

年に金融商品の契約書面が電子化、昨年は一般用医薬品全てのネット販売が可能になりま

した。

重要事項説明等の電子化については、主にIT関連企業約700社で作る新経済連盟など

IT業界に待望論がある一方、不動産業界や消費者サイドからは、重要事項の理解不足な

どによりトラブルが増えるのではないかと導入に慎重な声が多いようです。このため、国

交省において2014年4月に「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」が開

催され(当機構も委員として参加。)、喧々諤々の議論を経て、近く報告書が公表されるよ

うです。前回の検討会の取りまとめ案や各種報道によると、まずは賃貸借契約、法人間取

引に限り、事前登録を受けた宅建業者がテレビ電話を使って希望する依頼者との間で社会

実験として試行してみてはどうかという内容です。2年程度の実験の結果検証を経て、必要

な対応策をとるなどして問題ないと判断される場合は、賃貸借契約及び法人間取引に限り

本格運用に移行するとされ、概ね妥当な結論であると考えられます。

言うまでもありませんが、住宅などの不動産は高額かつ生活や仕事の基盤となるもので

あり、これから不動産を買おう、借りようとする方々にとって、その不動産がどういうも

のであるのか、契約はどうなるのかを十分理解して判断する必要があります。そしてその

内容は、売買で言えば、都市計画や建築基準上どのような建築制限や用途制限があるのか、

接道は公道なのか私道なのか、どのような場合に契約の白紙解除ができるのか、どの程度

の瑕疵があるのか。賃貸借で言えば、ライフラインや台所などの設備はどうなっているか、

抵当権などが設定されていないかなど、一般の消費者には容易にわからない事項にあふれ

ています。そこで、宅建業法は、売買や賃貸借の仲介等を業として行う業者を免許制とし、

買主や借主向けの重要事項説明書を作らせ、取引主任者と呼ばれる資格者に説明させるこ

とで、一般の消費者などにしっかりした判断をしていただこうとしているわけです。それ

でも、実際の入居後、自分の想像していたものと異なっている、それなら契約しなかった、

説明されていないなどとして宅建業者や行政庁に苦情を申し立てる例は後を絶たず(2013

年度国交省調査「宅地建物取引における主な苦情・紛争相談の件数」で重要事項説明等に

ついての苦情が売買、売買の媒介、賃貸借の媒介いずれもトップを占めています。)、宅建

業者としても依頼者と対面して説明することで、本当に理解しているか確認しておきたい

わけです。メールや郵送で送ってハンコが押されて返ってきても、本当に相手が読んで理

解しているかわかりません。対面による説明は時代遅れと言われるかもしれませんが、「あ

えてアナログな方法を採っている。」ということもできるでしょう。

アマゾンや楽天などが行う一般の電子商取引の場合は、商品をネット上で確認し、手元

に届いて初めて現物を見るわけですが、これを簡単に不動産売買や賃貸借にあてはめてよ

いでしょうか。おそらく消費者にとっては、契約をして鍵をもらうまでは楽でしょう。し

かし、実際に現物を見たら考えていたものと異なるというケースは容易に想像できます。

また、不動産の場合、金額が大きいだけでなく、一度契約してしまうと簡単に契約解除で

きません。無理に契約解除すれば売主から例えば代金の2割程度の違約金を求められます

し、賃貸借の場合は借主からの解約申し入れの日から例えば30日分の賃料支払いが求めら

れるでしょう(仲介手数料も返りません。)。その時になって、ネットだけでなく自分の目

で見ておけばよかった、重要事項説明書や契約書をきちっと読んで業者さんにもっと質問

しておけばよかったと後悔することになるでしょう。不動産に限ったことではないでしょ

うが、安易に契約して「失敗した」では済まされないのです。当機構も、消費者に対して

重要事項説明をよく聞いて何でも質問すること、必ず内覧をすることなどをアドバイスし

ています。

問題の本質は、宅建業法35条が義務付ける本番の重要事項説明をネットでできるかどう

かということよりも、重要事項説明書を早めに交付するなどして相手方にじっくりと検討

する機会を与えているかどうかということではないでしょうか。古くて恐縮ですが2006年

に発表された「不動産取引における消費者への情報提供のあり方に関する調査検討委員会

報告書」によると、回答した宅建業者の56.4%が重要事項説明を行う日以前に重要事項説

明書(その「案」を含む。)を交付しているとし、そのうちの7割以上が3日以上前に交付

しているとのことです。この場合、相手方はその重要事項説明書をじっくりと読んで質問

する機会が増え、本番の重要事項説明もスムーズに行われ、その後のトラブル防止につな

がる可能性が高まるでしょう。このような事前交付においてITを積極活用することはむ

しろ必要と言えますし、この部分については何ら宅建業法の規制はありません。現に、相

手方の要望に応えて重要事項説明書案文等をメールなどで事前交付している業者さんも珍

しくないと聞きます。ネットの活用によって忙しい消費者も気軽に問い合わせができる、

契約日当日の重要事項説明を長々聞くより理解度は深まるはずだというIT賛成派の主張

はこういうところにこそあてはまると思います。

重要事項説明の事項、特に登記の内容などは最新のものが必要ですし(急に抵当権等が

設定されたなど)、相手方の要望で追加調査を行って重説備考欄に書き込むこともあること

などを考えれば、完全な重要事項説明書を事前交付するのが困難な場合もありますが、都

市計画、建築基準関連など広告時点ですでに出来上がっている部分などについては事前に

メールなどで相手方に送付し、問い合わせも自社サイトの画面操作で受け付けるといった

工夫をしていけば、相手方の理解も深まりますし、本番の重要事項説明もスムーズに行わ

れると考えます。

不動産取引とITについては決して水と油ではなく、相手の理解を高めるためにITを

いかに活用するかと言う観点が重要で、本番の重要事項説明をITで行えるようにするか、

法改正をするかという議論の前に、ITを利用してできることはたくさんあると感じます。

今後の社会実験などを通じて、消費者の利益を損なうことなく不動産取引が活発になるよ

うな方向性が示されることを期待しています。

(注)ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会最終とりまとめは平成27年1

月30日に公表されました。

 

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