RETIOメルマガ第102号 今日の視点

RETIOメルマガ第102号より引用しております。

高齢者のすまいを考える

我が国の高齢化は急速に進んでおり、2060年には高齢化率(65歳以上の者の人口/総人

口)が約4割に達すると予想されています。高齢者の方々の住まいの所有関係については、

平成20年住宅・土地統計調査によりますと、65歳以上高齢者のいる世帯の持家率は約84%、

高齢者単身世帯に限っても約66%となっています。逆に言えば約34%の単身世帯が借家に

住まわれているということです。その内訳は約13%が公営やUR等の借家、21%が民営借

家であり、高齢者世帯における持ち家率も低下の傾向を示しているそうです。

たしかに当機構にも高齢入居者の方から「連帯保証人が亡くなり別の保証人を立てなけれ

ば退去してもらいたいと言われ困っている。」とか、宅建業者さんからは「単身入居高齢者

が居室内で亡くなった。このことを重説するべきか。」といったような相談が寄せられてい

ます。きちんと家賃が支払われている以上、連帯保証人が欠けたことだけでは明け渡しの正

当事由にはなりませんとお答えしていますし、また、自然死は自殺等と異なり心理的瑕疵に

該当するものとまでは認めがたいとする判例がほとんどであるため(東京地裁平成18年12

月6日判決の世田谷木造アパート自然死事件などが参考になります。)、相手方から特段の問

い合わせ等がない限り重説書に記載する必要は低いだろうとお答えしています。

日本賃貸住宅管理協会が平成22年に行った調査(会員企業157社(約96.6万人のオーナ

ー)から回答。)によると、単身高齢者の入居を拒否しているオーナーの割合が8%、拒否

感があるオーナーは約59%との結果が出ています。その理由としては、「死亡事故に伴う原

状回復や残置物処分等の費用の負担」「居室内での死亡事故発生そのものへの漠然とした不

安」「死亡事故後に空室期間が続くことに伴う家賃収入の減少への不安」などが指摘されて

います。また、親族などがおらず連帯保証人が確保できない場合も大半は入居拒否している

実態も指摘されています。オーナーや管理会社は、アパートで一人暮らしをする高齢者と連

絡が取れないような事態が起これば大変不安になります。この場合、警察に立ち会いをお願

いして合い鍵を使い部屋に立ち入り、すぐに手当てをする必要があると言われます。オーナ

ーの一番の懸念は入居高齢者の健康状態と不測の事態なのです。

国土交通省は高齢者や障害者、子育て世帯に住宅を貸すことに拒否感を持つオーナーの割

合を2020年度までに半減させる数値目標を決めたとの報道がありました。将来的には、高

齢者の方々が安心して住める、つまりバリアフリーでありケア施設が近くにあるような賃貸

住宅が増えるのが望ましく、サービス付き高齢者住宅等の設立支援、東京都が進めようとし

ている官民連携福祉貢献インフラファンド(福祉施設等を併設する不動産開発事業に公的出

資)、政府が進めるヘルスケアリートの育成などは効果的であるとは思いますが、いずれも

時間がかかります。

そこで、より多くのオーナーから高齢者のための住まいを積極的に提供していただく対策

が重要であると思われます。オーナーや管理会社からすれば、入居者に不測の事態が生じた

らどうするかが一番心配です。地方公共団体などが音頭を取って不動産や福祉関連団体も参

加した地域の協力体制を構築し、多くの既存賃貸住宅を高齢者向けに供給することが大事で

す。高齢者をはじめとする住宅確保要配慮者(低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子供

を育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者)の民間賃貸住宅への円滑な入居促

進を図るため、関係団体が連携し、住宅確保要配慮者及び賃貸住宅オーナー双方に住宅情報

の提供等の支援を実施する「居住支援協議会」が37都道府県、11区市で立ち上がっていま

す。例えば鳥取県居住支援協議会には宅建士の資格を持つ「あんしん賃貸相談員」が配置さ

れ、賃貸住宅に入居したい高齢者等の相談に乗り、入居を受け入れる旨の登録をしたオーナ

ーを紹介したり、地方公共団体や社会福祉協議会と連携して入居後福祉・生活支援の確保を

行ったり、不動産関係団体と連携して契約等に立ち会ったり、連帯保証人や緊急連絡先の確

保などに努めています。東京都文京区では今年4月から、高齢者などの入居を拒まないオー

ナーに謝礼金を支払う事業を始めています。

高齢入居希望者のための連帯保証人の確保に関して、当機構では、高齢者向けに家賃債務

保証業務などを行っている一般財団法人高齢者住宅財団を今年2月にお招きし詳しいお話

を伺いました。この財団はもともと平成5年に設立され、平成13年の高齢者すまい法制定

の際、高齢者居住支援センターとしての指定を受け、高齢入居者の連帯保証人となる業務を

開始しました。その後、障害者、子育て世帯、外国人などを対象に加えるとともに、滞納家

賃保証月数も6か月から12か月に伸ばしました。

同財団が高齢入居者の家賃保証を行うためには、まずは入居先のオーナーが同財団と協定

を結んでいる必要があります。協定を結んでいるということは高齢者の入居を原則として拒

否しないオーナーであると考えてよく、先の鳥取県「あんしん賃貸住宅登録」、文京区「す

まいる住宅登録」も同種の考え方でしょう。同財団によれば、過去の高齢者円滑入居住宅の

登録を受けている住宅が約18万戸、平成23年以降に供給されているサービス付き高齢者住

宅が約16万戸あり、ほとんどは同財団と協定を結んでいるそうです。なお、契約期間中に

連帯保証人が欠けたような場合には、賃貸住宅オーナーに同財団との協定締結をお願いした

り、地方公共団体や宅建業者さんに同財団と協定を結んでいる別の賃貸住宅を紹介してもら

うこともできます。

高齢入居者は年金等を受給しているため、賃料滞納による代位弁済などの事故は少ないそ

うですが、事故の際の求償・回収等一定のコストはかかります。一方、保証料は民間相場を

目安に2年保証で月額家賃の一定程度としていますが、月額家賃が1万円を切る地域も多く、

一定量の保証業務をこなさないと赤字になる可能性もあるそうです。居住支援協議会によっ

ては自ら保証業務を実施するケースもあるようですが、同財団との連携などを通じて採算性

の確保を検討する必要もあるでしょう。

高齢者の方々はできるだけ住み慣れた地域で居住を継続したい意向が強いと言われます。

住み慣れた地域に新たな高齢者向け住宅が建設されることも大事ですが、オーナーの理解や

地域の協力体制を整えて既存の賃貸住宅を活用する仕組みは即効性があります。高齢者の住

まいにふさわしい物件の開拓、情報の共有など宅建業者の協力が欠かせません。オーナーと

の関係強化、福祉関係者との人脈づくりなど宅建業者の新たなビジネスチャンスと考えるこ

ともできるでしょう。

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