RETIOメルマガ第102号 最近の判例から

RETIOメルマガ第102号より引用しております。

○いわゆるデート商法によりマンション購入契約をさせられたとする買主の損害賠償請求

が一部認容された事例

 

マンションの買主が、婚活サイトで知り合った者の言葉巧みな話術で好意を抱かされ、

これにつけ込まれて購入するに至ったとして、同人、当該物件を紹介した会社及び同社の

代表者に対して売買代金、諸費用及び弁護士費用等の支払を求めた事案において、これら

3者の共同不法行為責任を認め、売買代金及び諸費用から当該マンションの現存価値を差

し引いた金額とそれに対応する弁護士費用に限り請求が認容された事例(東京地裁 平成

26年4月1日判決 一部認容 ウエストロー・ジャパン)

 

1 事案の概要

X(原告:昭和44年生まれの女性)は平成20年頃、Y1(被告:昭和50年生まれの男

性)は平成23年5月頃、それぞれインターネット上のいわゆる婚活サイトに自己のプロフ

ィールを登録した。Y1は、婚姻歴があったが、婚姻歴はないと虚偽の記載をし、子がいる

ことも秘匿していた。

XとY1は、平成23年5月下旬以降、メールによる交信を行うようになり、同年7月2

日、初めて待ち合わせをして食事をし、Xは、Y1を結婚相手として強く意識した。

XとY1は、同月7日にも会い、Y1は、次に会う際には、売主a社の依頼を受けて本件

マンションの営業活動を行っていたY2社(被告:Y1はY2社の本部長)に寄ってほしい

旨を述べ、Xはこれに応じた。その後、Xは、Y2社を訪れ、Y1は、数時間にわたりマン

ション経営を強く勧めるプレゼンテーションを行った。その際、Y1は、Xが持参した源泉

徴収票をもとに、提案書も作成している。

XとY1は、その後も毎日メールや電話で連絡を取り合い、同月13日には、Xは、Y1

と共に金融機関への提出書類の取得を行った。

XとY1は、同月15日にもY2社で会い、Xは、Y1の後輩社員からも、数時間にわたり、

マンション経営を強く勧められた。同月21日、Xは、Y1に付き添われて売主a社の担当

者と喫茶店で会って契約の締結手続を行い、b銀行で融資を申し込み、同月29日には本件

売買契約に関する融資の実行がなされた。

Xは、Y1に対し、本件売買契約の締結後、繰り返し会うことを求めたが、平成24年1

月に1度だけ2人で会ったほかは会うことはなく、Xの確定申告手続の協力の求めや転売

の可能性の問い合わせについても、Y1は応じることはなかった。

Xは、Y1の言葉巧みな話術で好意を抱かされ、これにつけ込まれて本件マンションを購

入するに至った、Y1らの行為は組織ぐるみであるとして、Y1、Y2社及びY2社の代表者

Y3に対して、勧誘により支出した金員、慰謝料及び弁護士費用の相当額等合計3261万円

余の支払いを求めて提訴した。

 

2 判決の要旨

裁判所は、次のように判示し、Xの請求を一部認容した。

(1)Xは、Y1の本件売買契約の勧誘に躊躇なく応じ、本件売買契約の締結をしたものと認

められる。また、XとY1は、数回食事をともにした以外には、男女の関係に至ったと認め

られる事情を認めることができない。しかしながら、本件売買契約に至るまでのXとY1と

の状況等を鑑みると、通常の交友関係や商取引を超えて、極めて密接な関係と言わざるを

得ない。また、Xが、Y1に対し恋愛感情を抱いており、同人との将来の結婚生活に資する

ものと誤信して、本件売買契約の締結を決意したとの供述を採用することができる。

そして、本件マンションの売買価格は2580万円である一方で、現在の処分価格はせいぜ

い1100万円程度にとどまること、Y1は、本件売買契約の締結後は、Xに対し誠実に応対

していないことなどに鑑みると、Y1においては、Xの誤信を利用する認識(すなわち故意)

があったと認めることができ、違法であることは明らかである。よって、Y1は、Xに対し、

不法行為責任を負うといえる。

(2)Y1らが認めているとおり、本件売買契約の勧誘行為は、Y2社の業務行為として行っ

ており、当時、Y1は、Y2社の業務を統括する立場にあったことなどの事実も認められる。

そして、Y2社は、本件売買契約の関与について、Xに対してはコンサルタント業務、a社

に対しては紹介者として、不明瞭な関与形態を主張し、その業務の適法性について具体的

な主張立証も行っていない。そうすると、本件売買契約については、少なくともY2社が組

織的に関与したものとして、その責任を否定することはできないというべきである。よっ

て、少なくともY2社については、Y1とともに共同不法行為責任を負うといえる。

(3)Y3が、Y1の本件売買契約の勧誘行為への直接的な関与をしたと認めるに足りる証拠

はない。しかし、Y3は、当時、Y2社の株式を100%所有し、その業務を実質的に統括し

ていたことが認められ、さらに、Y2社の業務やコンプライアンス体制について積極的に反

証することをしていないことなどを併せ考慮すると、Y3が、Y1及びY2社とともに、会

社法429条1項に基づいて、損害賠償責任を負うというべきである。

(4)Xは、本件マンションの売買代金として2580万円のほか、諸費用81万円余の合計2661

万円余の支出をしたことが認められ、2661万円余から少なくとも本件マンションの評価額

1100万円を控除した1561万円余をXの損害と認めるのが相当である。Xが受けた本件損害

額と相当因果関係の認められる弁護士費用は少なくとも損害額の1割を下らないと認め、

Y1らはXに対し、156万円余を支払うのが相当である。その余の請求は理由がないので棄

却する。

 

3 まとめ

国民生活センターによれば、婚活サイトなどを通じたデート商法によって投資用マンシ

ョンなどを購入させられたとする相談は、2009年度以降急増し、その相談者の7割近くが

女性で、30歳代が最も多いという。また、被害に遭えば経済的な負担は大きく、手口に気

付いた後の精神的なダメージも大きいとされる。

本件では、被告会社は、売主を紹介した立場にとどまり、仲介業務を行ったわけではない

とされるが、仮に宅建業者が仲介行為として加担したとされる場合には、宅建業法65条(指

示及び業務の停止)あるいは66条(免許の取消し)に基づき、厳しい監督(行政)処分が

なされるものと思われる。

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