RETIOメルマガ第93号 相談・紛争事例等より

RETIOメルマガ第93号より引用しております。

マンション管理費の滞納の精算について、最近、媒介業者より以下のような相談がありまし
た。
先日、中古マンションの売買契約の仲介を行い、残代金授受と所有権移転登記も無事完了さ
せた。
本件売主は所有期間中に管理費を滞納しており、契約にあたっては、残代金授受後、売主が
管理会社に納付することで双方合意していたが、売買契約書へは明記していなかった。
一方、重要事項説明書内で「滞納管理費は売主が負担します」と記載しており、売主買主と
もに署名捺印があった。
入居後、しばらくして買主は、管理組合から前所有者の滞納分の請求を受けた。管理組合の
話によると、前所有者の滞納管理費は全く支払われていないとのこと。驚いた買主から仲介
業者に連絡があり対応するよう要求があった。
仲介業者が売主に確認したところ、売主からは「受領した売買代金を全て金融機関の返済に
あててしまい、管理組合に対しては全く返済してない、お金がないので払えない」との
回答であった。
買主は、仲介業者に対しても責任追及する姿勢を見せ始めている。

当事例の問題点
(1) 売主と買主の合意事項である滞納管理費の精算に関する規定が、売買契約書に記載
されていないこと。
売買契約書を作る際、媒介業者は滞納管理費に関して、「本来、その支払いは売主の管理会
社に対する債務であり、売主が負担すべき金銭なのだから売主から支払うのが当然。売買契
約書に記載するまでもない」と考えたのかもしれません。しかし、後に記載の通り清算の方
法が複数通りあることを考えると、売主が滞納管理費を支払うことで合意されていたのであ
れば、売買契約書上にその旨記載すべきであったと思います。本件が裁判になった場合、売
主が、「そのような約束はなかった。売買契約書にも書いてない」と主張するかもしれませ
ん。その場合、合意があったことの証明に余分な労力を要することとなります。売買契約書
に記載があれば、一応合意があったものと推察されますのでこのような主張は難しくなると
思います。
この点「重要事項証明書に記載があるじゃないか」との意見があるかもしれません。確かに
重要事項説明書に記載があり、双方押印している点では、合意があったことを推察させる強
い証拠になるかも知れません。ただ、重要事項説明書はあくまでも、不動産業者が当事者に
対し説明する書類に過ぎず、ここに記載があるからといって、当然に当事者間で合意がなさ
れているとまではいえないのです。
また、売買契約書に記載のない事項を、重要事項説明書に記載している点についても、疑問
を感じます。実際に合意した事項を記載したのだから仕方ないのかもしれませんが、後日、
そのような合意はなかったと判断された場合、結果として重要事項説明書に間違ったことを
記載したといわれかねません。

(2) 管理会社への返済を売主に任せ、その場で完結させなかったこと
滞納管理費のある物件の所有権が、売買により新しい所有者に移った場合、管理組合は旧所
有者に対して滞納管理費の支払いを請求することができるのはもちろん、新所有者に対して
も、その支払いを請求することができます(区分所有法第8条 特定承継人の義務)。従っ
て、滞納管理費の支払いがされない以上、売主、買主ともに請求を受ける危険があるわけで
す。では、売主、買主、どちらが迷惑を被るでしょうか?
一概には言えないかもしれませんが、すでに退去した売主と、所有者となり今後そこで生活
する買主では、おそらく買主の方が滞納管理費の問題を深刻に感じるのではないかと思いま
す。また、管理組合としても近くにいる買主に請求する方が楽だと考えるかもしれません。
加えて、売主は管理費を滞納しています。経済的に困窮しているか、何らかの理由で管理
費の支払いに納得してないことが容易に推測されます。個人的な意見ですが、このような状
況下の売主に滞納管理費の支払いを任せてしまうことには、大きなリスクがあるのではない
かと思います。
売買契約書上の義務の履行に関しては、一義的には売主と買主の間で解決すべき問題ですが、
実務上ではそれで済ませられるはずもなく、仲介者が巻き込まれるのは必至ではないでしょ
うか?
今回のような場合、残代金決済時にその場で売主から管理組合の指定する口座に送金させ
るか、契約書上に買主が支払う為、残代金支払い時に滞納管理費相当額を差引くとの規定を
契約書に置いたうえで、残代金決済完了後速やかに買主から管理組合の指定する口座に送金
してしまえば、何ら問題は発生しなかったものと考えます。
本件が裁判となった場合、最終的に仲介業者に損害賠償義務が認められるかどうかは判断で
きませんが、少なくとも当該仲介業者はこの対応に追われることとなります。ほんの少し、
気を付けることで、無用なトラブルの発生を防止でき、両当事者に満足してもらえる仲介が
できるうえ、トラブル対応に余分な時間や費用を使うことを回避することができます。

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