RETIOメルマガ第98号 最近の判例から

RETIOメルマガ第98号より引用しております。

○購入した土地より発見された地中障害物について、媒介業者に対する説明義務違反の請

求が棄却された事例

 

土地の買主が、購入した土地を転売後、コンクリート造の地中障害物が発見され、その

撤去費用等を、媒介業者に対し説明義務違反に基づく損害賠償として請求した事案におい

て、買主は、媒介業者が本件土地については問題ない旨の発言をしたこと、および重要事

項説明書に地中障害物については不明であるとの記載がなかったことを根拠としたが、媒

介業者が、本件土地に関し問題ないと説明したとは認められない、また、地中障害物の存

否に関して不明であるとの説明は口頭でされていたと認められる以上、重要事項説明書に

不明である旨の記載をする義務まで負っていないとして、買主の請求が棄却された事例(東

京地裁 平成24年11月13日判決 ウエストロー・ジャパン)

 

1.事案の概要

買主X(原告:宅建業者)は、平成18年12月、Y(被告:宅建業者)の媒介により、

A(売主)から、本件土地および本件建物を代金4億5000万円で購入した。

Xは、平成19年1月、本件建物を解体し、本件土地を更地にした。また、Xは、同月頃、

本件土地について地下1m程度までの土壌調査を行った。

Xは、平成19年5月および同年7月、本件土地を分筆し、平成20年1月、そのうち1

筆をBに売却した。

平成21年10月、Bに売却した土地の深さ2.4mの地中に、縦約6.5m、横約5m、高さ

約1.4mのコンクリート造の地中障害物が発見された。

YはAから本件土地の瑕疵の有無については分からないと説明を受けていたにもかかわ

らず、Xから「土壌汚染とか大丈夫でしょうか」との質問に対し、「土地については問題な

い」と事実と異なる説明をしたこと、および、YはAに対し旧建物の地下室の撤去など旧

建物の解体状況について聞き取り調査をした結果について、Aより「わからない」との回

答を得ていることを重要事項説明書に記載すべき義務があったにも関わらず、これを記載

しなかったことは説明義務違反であるとして、XはYに対し、地中障害物の撤去費用等970

万円の損害賠償を求めて提訴した。

Yは、Xに対し、本件土地に地中障害物があるか否かは不明であることを口頭で説明し

ており、本件土地について問題ないと説明したことはない。また、Yは旧建物の解体状況

においてもAに聞き取り調査した結果、不明であることを、Xに口頭で説明しており、こ

れに加えてさらに重要事項説明書に記載する必要はないと主張した。

なお、本件は、X(買主)がA(売主)に対し、本件と同額の損害賠償を求めたが、A

には悪意・重過失は認められないとしてXの請求が棄却された(東京地裁 平23・6・24)

判決がなされた後に、Xより提訴されたものである。

 

2.判決の要旨

裁判所は次のように判示し、Xの請求を棄却した。

Xは、平成18年12月初旬、土壌汚染と地中障害物の二つの存否を確認する趣旨で「土

壌汚染とか大丈夫でしょうか」とYに質問し、「土地については問題ない」との回答を受け

ると、一般的には土壌汚染や地中障害物の存在については、一定の調査の上で発見できな

かったと報告されることが通常であることを認識していたにもかかわらず、どのような調

査によって土壌汚染や地中障害物の不存在を確認したのかについて全く尋ねることなく、

本件土地には土壌汚染および地中障害物は存在しないと理解したというのであり、その証

言内容は、不動産の売買や仲介業を営むXにおける土地の買付担当者の証言として、不自

然、不合理なものであると言わざるを得ない。また、Yが本件土地について具体的な根拠

や資料もないのに土壌汚染や地中障害物が存在しない旨断言する合理的な理由も見当たら

ない。

YはXに対し、売主に対する聞き取りなどの調査結果を踏まえ、旧建物の地下室等の設

備が本件土地の地中に残っているかについては分からない旨口頭で説明していたと認めら

れる。Xが本件土地の購入後に実際にボーリング調査を実施していることからすると、X

は、Yによる上記説明を受けた結果、本件土地の地中障害物についてはその存否が不明で

あることを前提に本件売買契約を締結したと認められる。このような事実関係を前提とす

ると、Yにおいて、上記調査説明を超えて、旧建物の地下室の有無という当時その存否が

不明であったものについて、重要事項説明書に「分からない」と記載すべき義務があった

などということはできず、Xの主張は採用できない。

 

3.まとめ

本件においては、Yは、A(売主)より建物関係資料を入手し、過去の建物解体等につ

いて聞き取り調査をしたうえで、Xに口頭で説明していたものであるが、その内容を重要

事項説明書に記載していなかったためXから、損害賠償を求められたものである。

重要事項説明書は、取引時点の不動産の実態や契約内容等を売主、買主、宅建業者の間で

共有し、後々の紛争を回避するうえでも重要な書類である。

実務において、本件のように調査結果が不明であることを口頭で説明してあった場合で

も、その内容を重要事項説明書に記載し、記録に残すことが、後々の紛争防止の観点から

必要であると再認識される事例である。

地中障害物に関する最近の判例としては、購入した土地において、地中にコンクリート

杭が発見されたため、買主が予定していたマンションを建築するために必要な杭を打つこ

とができないことは瑕疵と認められ、買主の瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求が認容さ

れた事例(東京地裁平成25年11月21日判決)や、購入した土地に基準を超える土壌汚染

を含む地中障害物が発見されたが、特約条項による売主の瑕疵担保責任期間(1年)が経過

していること、売主および媒介業者には瑕疵を認識しなかったことに悪意、重過失は認め

られないとして、買主の請求が棄却された事例(東京地裁平成25年12月10日)などがあ

り、併せて参考とされたい。

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