◆◇◆ 最近の裁判例から ◆◇◆建築有効面積の説明

RETIOメルマガ第183号より引用

◆◇◆ 最近の裁判例から ◆◇◆

                  

 

【建築有効面積の説明】

土地の建築有効面積が少ないことが不実告知や隠れた瑕疵に当たるとした買主の訴えが棄

却された事例(東京地判 令2・9・24 ウエストロー・ジャパン)

 

1 事案の概要

 

買主Xは、平成30年8月11日、売主業者Y1との間で、媒介業者Y2の媒介により、自

宅建設用地として本件土地を売買代金2980万円で購入契約し、平成30年9月27日に残代

金を支払いのうえ引渡しを受けた。

本件売買契約前には以下の経緯があった。

①Y2の広告では、Y1が提供した測量図に基づき、土地面積「38.29㎡(11.58坪)(実測)」

と記載され、建物プラン例として、延床面積51.56㎡とする2階建て建物の設計図が掲載

されていた。

②Xは、Y2に、親から住宅資金援助を非課税で受けるためには、新築家屋の床面積が50㎡

以上であることを要するため、本件土地に50㎡以上の床面を持つ建物を建築することが可

能であるか確かめてほしいと申し出た。

③Y2は、訴外の建築会社が作成した複数の建築プラン(いずれも2階建てで、延床面積50

㎡を超えるもの)を提示した。

④本件売買契約書及び重要事項説明書には、本件土地の実測面積につき、「平成30年5月8

日作成の分割計画図(仮図)に基づく表示であり、寸法及び面積には増減が生ずる可能性が

あります」「世田谷区との狭あい道路拡幅整備事前協議が未了のため、面積及び、各辺長に

多少の増減が生じる場合があります。また、本物件敷地の建築有効面積は前記の道路後退面

積約1.20㎡及び、隅切り部分約0.93㎡を除く約38.29㎡となりますが、前記事由の為、面

積及び、各辺長に多少の増減が生じる場合がありますので予めご承知おき下さい。」という

旨が記載され、また、事前の建築プランにも「正確な測量図、現地測量(境界確認)を基に

したプランではない為、建物形状及び間取り、外構計画等に変更が生じる場合があります。」

と記載されていた。

本件土地引渡し後、本件土地の建築有効面積が実際には32.99㎡であることが分かり、延

床面積50㎡以上の建物が建てられないとして、XはY1に対して、消費者契約法第4条1

項1号による売買契約取消し、瑕疵担保責任による契約解除、売買契約の錯誤無効や詐欺取

消しを、Y2に対しても共同不法行為に基づく損害賠償を求めて訴訟を提起した。

 

2 判決の要旨

 

裁判所は、次のように判示して、Xの請求をいずれも棄却した。

(建築有効面積の不実告知の有無)

本件契約書及び重要事項説明書に本件土地について、建築有効面積が38.29㎡であるこ

とを必ずしも保証するものではない旨の記載があること、Yらが当初から本件土地の建築

有効面積に関して敢えて断定的な説明をすべきであった事情は特に見当たらないことから、

Y2が本件売買契約を締結する前にXに対し、本件土地の建築有効面積が38.29㎡であると

断定的に告知したとは認められない。

したがって、消費者契約法第4条1項1号に基づく売買契約取消しは理由がない。

(隠れた瑕疵の有無)

Xは、床面積50㎡以上の建物の建築が可能であることが本件売買契約の重要な要素とさ

れていたにも拘らず、実際の建築有効面積が32.99㎡しかないことが隠れた瑕疵に該当す

ると主張する。

確かに、Xが本件土地上に50㎡以上の床面積を有する建物を建築することが可能である

かどうかを重視していたことは否定し難い。

しかし、Xは、「地上2階建て」の建物により床面積50㎡以上を確保する必要があること

をYらに対して伝えたか否かにつき具体的な供述をしていないし、本件土地上に50㎡以上

の床面積の建物をおよそ建築することができないという的確な証拠もない。

(錯誤無効・詐欺取消しの可否)

Xは、本件土地の建築有効面積が38.29㎡であると誤信して売買契約を締結したから、錯

誤により無効であると主張する。

しかし、本件売買契約においては、契約対象の地積の確定は公簿面積によるとされ、公簿

面積と実測面積が異なる場合に実測精算を行うものとはされていないことからすれば、本

件土地の面積が契約の要素であるとはいえず、建築有効面積が38.29㎡であると誤信して

いたとしても、動機の錯誤にとどまる。

そして、Xは、売買契約の締結に際し、Y2から本件土地の建築有効面積として記載され

た「約38.29㎡」に変動が生ずる可能性がある旨の説明を受けており、Yらに対して、明示

的にも黙示的にも本件土地の建築有効面積が38.29㎡であることを要するとの動機を表示

していたとも認められず、錯誤無効との主張は理由がない。

また、Xは、Yらが本件土地の建築有効面積が38.29㎡に足りないことを知りながら、X

にその旨誤信させたものであるから、詐欺による取消しを主張するが、本件土地の建築有効

面積が38.29㎡である旨を断定的に告知したとまでは認められない。

 

3 まとめ

 

本事例は、売主業者や媒介業者が建築有効面積を断定的に告知したとは認められないと

して買主の訴えが棄却されたものです。

これに対して、4階建て・延床面積100㎡の工房兼住宅を建築する目的で33㎡の土地を

購入した事案で、媒介業者が「延100㎡の家は問題なく建つ」と説明していたにも拘らず、

斜線制限により4階建ての建物が建てられず、購入目的が達せられなかったとして、売主業

者及び媒介業者の説明義務違反による損害賠償責任を認めた裁判例(東京地判 平21・4・

13 RETIO77-110)があります。

宅建業者としてこの種の紛争を防ぐには、購入者の契約目的や購入動機をよく確認して

丁寧な説明を心掛けるべきですが、宅建業者の調査義務を超える領域については、買主自身

で専門家に調査依頼するようアドバイスし、その旨を営業記録に残しておくことが必要で

しょう。

 

 

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