最近の判例から

不動産適正取引推進機構 RETIOメルマガ第90号より転載しております。

○容積率および建ぺい率違反であるとの説明がなかったとする説明義務違反による損害賠
償請求が、棄却された事例

本件は、賃貸借目的で建物を購入した買主が、建物の容積率および建ぺい率が建築基準
法に違反する状態であったとの説明がなかったとして、売主の説明義務違反、仲介業者の
債務不履行あるいは不法行為に基づく損害賠償の支払いを求めた事案において、仲介業者
の重要事項説明時の説明は、容積率違反の可能性を認識するに十分であり、建ぺい率違反
については、違反の有無を明らかにするまでの調査義務を負っていないとして、請求が棄
却された事例(東京地裁 平成25年3月6日判決 棄却(確定)ウエストロー・ジャパン)

1 事案の概要
買主X(原告)は、平成20年6月25日、売主Y1(被告)から建物(以下「本件建物」
という。)を、Y1他2名から土地(以下「本件土地」という。)を、瑕疵担保責任は免責
とする条件で、代金合計3億5425万円(内、建物代金6000万円)で買い受けた。
売買契約にあたり、Y1らは仲介会社Y2(被告会社)に媒介を依頼し、一方、Xは訴外
仲介会社に媒介を依頼しており、XとY2との間に契約関係は存在しなかった。
重要事項説明では、適用される建ぺい率・容積率、建築当時に車庫部分(98.66平方
メートル)
の容積率緩和があったこと、検査済証が未取得なこと、売買契約当時の現況(車庫部分が
事務所・店舗になっていること)の説明とともに、増改築や再建築の際には、現在と同規
模の建築物は建築できない場合があるとの説明がされ、延べ面積828.29平方メート
ル(車庫98.66平方メートル)と記載された建築確認申請時の「建築計画概要書」が
交付された。
Xは、平成20年9月29日、残代金を支払い、同日、被告Y1らから本件建物及び本件
土地の引渡しを受けた。
Xは、契約後の測量等による土地面積ならびに建築面積から、本件建物が建築基準法に違
反しているとして、建物代金と、本件建物が建築基準法違反の建築物であることを前提と
した適正取引価格の差額2220万円を、Y1、Y2が連帯して支払うよう提訴した。

2 判決の要旨
(1)本件建物の建築基準法違反の有無
本件建物の容積率・建ぺい率は建築基準法に違反する状態にあったと認められる。
(2)Y2の損害賠償責任の有無
ア 債務不履行による損害賠償責任の有無
Xが指摘する宅地建物取引業法第31条、同法1条等の趣旨を前提としても、何ら契約関
係の存在しないXとY2との間において、契約に基づく債権債務関係の存在を前提とする
債務不履行責任の問題が生じるとは解されず、XのY2に対する債務不履行を理由とする
損害賠償請求は理由がない。
イ 不法行為による損害賠償責任の有無
宅建業法35条はその文言から、宅地建物取引業者が調査説明すべき事項を限定列挙した
ものとは解されないから、宅地建物取引業者が、ある事実が売買当事者にとって売買契約
を締結するか否かを決定するために重要な事項であることを認識し、かつ、当該事実の有
無を知った場合には、信義則上、仲介契約を締結していない売買当事者に対しても、その
事実の有無について説明義務を負う場合があると解される。
Y2は、本件建物が建築確認申請時には、駐車場とする床面積が98.66平方メートル
であること
を理由に容積率の緩和を受けていたこと、売買契約締結当時には、本件建物に駐車場部分
が存在しないため、増改築、再建築の際には、現在と同規模の建築物は建築できない場合
があることを、重要事項説明書に記載し、Xに対する説明を行っている。
この説明によれば、本件建物が売買契約当時、容積率の制限に違反した状態にある可能性
を認識できたというべきであり、Xが複数の中古不動産を購入して不動産賃貸業を営む株
式会社であることを併せ考えると、Y2の行った説明は、Xが本件建物の容積率違反の可
能性を認識するに十分なものであったというべきである。また、Xは本件建物が容積率違
反の状態にあるか否かについてY2に尋ねたことはないことからすると、Y2に本件建物
の容積率違反の有無を確定するための調査義務があったとは解されない。
したがって、本件建物の容積率違反に関し、Y2には、調査説明義務の違反はなく、こ
れを理由とする損害賠償請求は理由がない。
建ぺい率に関しても、売買契約締結後の測量等により、土地面積が413.30平方メ
ートル本件建物の建築面積が250.11平方メートルであると判明したのであり、また、
Xから本件建物の建ぺい率について質問や調査の要請がなかったことからすれば、Y2自
らが本件土地の測量や本件建物の建築面積を実測して建ぺい率違反の有無を明らかにする
までの調査義務を負っていたと解することはできない。
以上から、本件建物の建ぺい率違反に関し、Y2には、調査説明義務の違反はなく、こ
れを理由とする損害賠償請求は理由がない。
(3)被告Y1の損害賠償責任の有無
Xは、Y2から本件建物の容積率違反の可能性について十分な説明を受けており、Y1に
ついて説明義務の懈怠の有無を論じるまでもなく、容積率違反に関する説明義務の懈怠を
理由とするY1に対する損害賠償請求に理由がないことは明らかである。
本件建物が建ぺい率の制限に違反した状態にあることも、売買契約締結後に明らかにな
ったものであり、Y1が所持していた本件建物に関する資料等には建ぺい率違反をうかが
わせるものが存在しなかったことからすれば、売買契約当時、Y1は本件建物が建ぺい率
違反の状態にあることを知っていたとは認められず、通常の注意を払えば知り得たとも認
められない。したがって、建ぺい率違反についての説明義務の懈怠を理由とする被告Y1
に対する損害賠償請求も理由がない。
以上によれば、Xの請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとする。

3 まとめ
土地建物売買契約において、土地は公簿売買とし、建物書類は建築確認申請時の書類のみ
で検査済証等がない取引では、媒介業者も測量その他の調査をしない限り、容積率等の違
反の有無を確定できない。買主からの購入目的の説明や質問によっては、この調査が、宅
建業法第35条の限定列挙項目以外の調査義務と見做され、怠ると媒介業者の調査説明義
務違反と判断される可能性も十分ありうる。
本件はこの調査義務を再認識するうえで、参考となる事例である。

不動産に関する税金に関するお問い合わせ

    お名前 (必須)

    メールアドレス (必須)

    題名

    メッセージ本文

    Leave a Comment

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA


    このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください