財団法人不動産適正取引推進機構 相談・紛争事例70より引用します。
中古マンションの媒介(買)をする業者の方から、次のような電話相談を受けました。
一般個人が購入するマンションの契約条件調整を行っていたところ、マンションの所有
名義人が売側媒介業者(法人)の代表者であること、また、売側媒介業者を債務者とする
抵当権が設定されていたことが分かった。真の所有者が宅建業者(法人)の可能性がある
ように思えるが「売主の瑕疵担保責任についての期間」はどのように設定すべきか。
法人が資金調達を行う場合、経営者が自らの資産を担保に提供し、金融機関から融資を
受けることはよくありますので、ご相談のマンションの抵当権の設定もこのようなケース
であることが想定されました。
宅建業者の代表者個人の名義で登記がされていれば、それに対応する権利関係が存在す
るものと推定されますので、マンションを代表者が平穏に使用・占有しているとすれば、
代表者が真実の所有者であると推定することができます。
ご相談の主旨は、所有権が売側媒介業者に譲渡されていたにもかかわらず移転登記がされ
ていない場合に、瑕疵担保期間を短く設定すると業法40条「瑕疵担保責任についての特約
の制限」の定めに違背し、買主に損害を与えてしまわないかというご心配によるものだと
思われましたので、マンションの固定資産税等の支払状況、水道光熱費の支払状況を確認し、
また、所有権の登記済証・登記識別情報の所持および不動産取得時の売買契約書の確認を
勧めしました。
売側媒介業者がマンションを「販売用不動産」として計上している場合、固定資産税を
支払っている場合には、登記名義と実態が相違している可能性が高いといえますので、所
有権移転登記等を要請し、登記名義人を真の所有者である宅建業者にしてもらうことが必
要となります。宅建業者の中には、販売用不動産の仕入れに際し、諸々の事情により代表
者個人名で取得するケースもあるようですが、実態に沿わない転売行為は、宅建業法の免
許の条項に抵触する無免許営業の可能性があります。
なお、個人免許の宅建業者の資産売却にあたっては、個人資産と営業用資産が明確に分
離されている場合を除き、宅建業者が自ら売主となる取引として瑕疵担保期間を設定すべ
きだと考えられます。
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