RETIOメルマガ第92号 最近の判例から

RETIOメルマガ第92号より引用しております。

賃料一部不払いによる賃貸借契約の解除及び建物明渡し並びに滞納賃料等の支払い請求が
認められた事例

賃貸人が賃借人の賃料一部不払いによる賃貸借契約の解除及び建物明渡し並びに滞納賃
料等の支払いを求めた事案において、賃貸人、不動産会社及び賃借人に法令に抵触する行
為があっても、公序良俗に反するとまでは言えないとして、賃貸借契約に基づく賃貸人の
請求が認められた事例(東京地裁 平成25年4月22日判決 認容 ウエストロー・ジャパ
ン)
1.事案の概要
賃貸人X(原告)は、平成20年2月4日、賃借人Y(被告)と、建物(以下「本件建物」とい
う。)について、賃料月9万8千円、賃貸借期間を同月13日から平成22年2月12日まで
とする賃貸借契約(以下「契約書A」という。)を締結した。
一方、Yは、Y及びXが本件建物の管理委託している不動産会社(訴外)が、平成20年2
月4日、賃料月9万8千円とする契約書Aのほか、賃料月6万9千円(生活保護の住宅扶助
上限額月6万9800円)とし、賃貸借期間を同月1日から平成22年1月31日までとする契
約書(以下「契約書B」という。)を作成したこと、平成22年7月20日の更新時にも賃料
月6万9千円とする更新契約書を作成し、その領収証等に賃料を月6万9千円と記載され
ているなどとして、本件賃貸借契約に係る賃料も契約書Bにより月6万9千円である旨を
主張して、平成22年12月以降、契約書Aと・u梵ハ鷭顳袖Ⅵ椶侶邀枋体舛虜抗曖暇釭浩蕷澆吏・w)錫鮠不払いを繰り返した。
そこで、Xは、Yの賃料一部不払いを理由に平成24年8月6日に本件賃貸借契約(平成
22年7月20日及び平成24年2月14日に同一条件で更新)を解除、Yに対し、本件建物の
明渡しと共に、平成23年10月分の未払賃料千円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(平
成24年8月23日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払と平成23年11
月1日から平成24年8月6日までの滞納賃料と同月7日から本件建物の明渡し済みまで月
9万8千円の割合による賃料相当損害金の支払いを求めて提訴した。

2.判決の要旨
裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を認容した。
(1)本件賃貸借契約の賃料額について
Yは、住宅扶助の給付を受けるため、役所に対し、契約書Bのほか、領収証等を提出・
提示していたことが認められ、契約書Bは、Yが役所に提出・提示するため、本件建物の
賃料を月6万9千円であるとの外形を作出するために作成さku樊「慎燭い・△蝓・戚鷭顳造笙・w)錫鮠各領収証における賃料額通りに賃料を減額する旨の合意があったと認めることはできない。
そして、X及び不動産会社は、Yとの本件賃貸借契約の交渉段階から平成24年7月の解除
に至るまで、一貫して賃料月9万8千円を前提として賃料の支払を催促し、Yも、役所の
住宅扶助月6万9千円との差額2万9千円について、毎月支払義務を負う前提の対応して
いた。
したがって、Yの賃料月6万9千円とする主張は採用できず、XとYとの間では、平成
20年2月4日、賃料を月9万8千円、賃貸借期間を同月13日から平成22年2月12日まで
とする本件賃貸借契約が成立し、同年7月20日及び平成24年2月14日に各更新されたも
のと認められる。
(2)Xによる受領拒絶(抗弁)について(省略)
(3)XとYとの間の不訴求の合意の成否(抗弁)について(省略)
(4)本件賃貸借契約の公序良俗違反該当性(抗弁)について
Yは、公序良俗違反で契約書Aの無効を主張するが、本件賃貸借契約は、飽くw)€「泙任癸恙・w)錫鮠とYとの間の合意であり、仮に、不動産会社が本件賃貸借契約と異なる内容の契約書Bを
作成し、これを役所に提出・提示して住宅扶助支給を得ていたことが、宅地建物取引業法
に違反する行為となり、また、契約書Bの提出に基づいて住宅扶助を受けていたことが生
活保護法に違反するとしても、本件賃貸借契約の賃料は、Yが賃借する以前から月9万8
千円と設定して借主を募集していたものであり、本件賃貸借契約でXがYに対して不当に
高額の賃料を設定したものではないことや、契約書Bの作成は、本件賃貸借契約における
賃料が住宅扶助に係る基準額の上限を超えていたから、Yに住宅扶助の支給を得させる目
的で作成されたことを考慮すれば、契約書Bの内容が真実と合致しないことが、直ちに本
件賃貸借契約自体が公序良俗に反するものということはできない。
そして、他に本件賃貸借契約が公序良俗に反することを認める証拠はない。
(5)以上、その余の争点を判断するまでもなく、Xは、平成24年8月6日の経過によって、
本件賃貸借契約を解除したものと認められ、Yは、本件賃貸借契約の解除に基づき、Xに
対し、本件建物の明渡し義務を負う。
また、不動産会社は、平成22年2月23日、賃料月9万8千円を前提に未納額の支払及
び更新料の支払を求めると共に、支払がない場合には解除する旨通知し、Yは、同年7月
20日、同日時点における本件賃貸借契約に基づく賃料未納額をXに対して支払った上で、
本件賃貸借契約の更新をした。
そして、同日以降にYからXに対して支払われた賃料は、同年8月2日から平成24年3
月1日まで役所から直接振込送金されたほか、同年4月9日にYが9万8千円を持参支払
した。Xがその他に13万4千円が弁済されたと主張する金額を弁済期が先に到来する本件
賃貸借契約の賃料に充当して計算して算定すると、Yは、本件賃貸借契約について、平成
23年10月分の賃料のうち千円と同年11月分から解除日である平成24年8月6日までの賃
料を未払いであったから、同賃料の支払義務をXに対して負ku梺C討い襦・・w)錫鮠さらに、Yは、平成24年8月7日以降、本件建物を不法占有しているから、本件建物の明
渡し済みまで、民法709条に基づき、本件賃貸借契約の賃料相当額の損害賠償債務をXに
対して負っており、その損害額は月9万8千円を下らない。

3 まとめ
本判決では、賃貸人、不動産会社及び賃借人に、住宅扶助を支給させるために契約書を
偽造するといった法令に抵触する行為があっても、直ちに公序良俗に反し本件賃貸借契約
が無効とはいえず、飽くまでも賃貸人と賃借人との間の合意による契約に基づき判示して、
賃貸人の請求を認容した。賃借人からの要請に基づいて契約書を偽造するといった賃貸人
や不動産会社の法令に抵触する行為が契約後の紛争の火種になった事例であり、宅地建物
取引業者の実務上の教訓として留意したい。

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