RETIOメルマガ第94号より引用しております。
≪任意後見制度について≫
仲介業者からの相談で、売買契約の打合せに際し、所有者の長男が「自分は父と任意後見
契約を締結しており、父に代理して契約手続きを行います」との申し出がありました。この
制度の内容と注意点等について質問がありました。
任意後見制度とは、自らの判断能力が十分にあるうちに、判断能力が不十分になったとき
に備えて、信頼できる人(任意後見人)との間で財産管理等についてあらかじめ委任契約を
締結しておくという制度です。(任意後見契約に関する法律第2条)
仲介業者としては、所有者の長男が代理権を有しているか確認する必要がありますが、所
有者とその長男の間で任意後見契約を締結しているだけでは、代理権の効力は発生しません。
本人の判断能力が低下した時点で、本人、配偶者、親族等の申立てにより家庭裁判所が任意
後見監督人を選任したときに任意後見契約は効力を生じ、代理権の効力が発生することにな
ります。
したがって、長男から任意後見契約の内容等が記載されている登記事項証明書の提出を受
け、契約書が公正証書で作成されているか、長男が任意後見人になっているか、当該行為
が代理権の範囲内の行為であるか等を確認することが必要です(任意後見契約に関する法律
第2条、3条)。
売買契約時には売主は認知症により意思能力がないとのことで不動産売買契約が無効と
なった過去の事例(平成21年10月29日東京地裁、平成20年12月24日東京地裁)
もあり、仲介業者としても高齢者との取引については慎重な対応が求められるなか、特に意
思能力については表面上では判断できない場合も考えられます。
また、高齢者(消費者)からの相談でも、「自分が元気なうちはいいが、将来、認知症等
により意思能力が低下したときのことが心配だ」という声がよく聞かれ、任意後見制度の説
明をすると当該制度の必要性に納得しているケースがありました。
今後、高齢化が進んでいく中、今回のようなケースが増加していくものと予想されます。
仲介業者が、成年後見制度(法定後見制度・任意後見制度)を理解しておき、必要に応じて
当該制度の利用を勧めることは将来のトラブル防止につながるものと思われます。
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