RETIOメルマガ第96号 今日の視点

RETIOメルマガ第96号より引用しております。

連帯保証人について(その1)

 

前回のメルマガでは急増する家賃保証会社について取り上げましたが、今回は連帯保証

人について考えてみます。当機構に寄せられる連帯保証人についての相談は多いのですが、

その内容を大まかに分けると、

(1)賃借人による賃料不払いがあった(行方不明となったという相談もあります。)として、

連帯保証人である自分に弁済請求が来たが、賃貸借契約更新の際に自分に何の話もなく、

更新後の契約については自分に連帯保証責任はないのではないか。

(2)賃借人が自殺し連帯保証人である自分に損害賠償請求が来た。

(3)賃借人が何度も家賃滞納しその都度立て替えており連帯保証人からはずれたい。

(4)付き合っていた彼女の連帯保証人になっているが別れたので保証人からはずれたい。

(5)連帯保証人が生活保護を受けるようになり保証人としての資力が不足しているとして、

管理会社から別の保証人が立てられなければ契約解除だと言われている。

(6)娘がアパートを借りるに当たって自分は連帯保証人になるつもりだが、別途家賃保証会

社にも依頼する条件があり、おかしくないか。

まず(1)のような相談は最近では減ってきたように思われますが、その背景として平成9

年11月13日の最高裁判例があると思われます。賃貸借契約の合意更新後に賃借人による

賃料不払いが発生し、賃貸人が2年分の延滞賃料を連帯保証人に求めたところ、連帯保証

人側は、保証契約は更新後の賃貸借契約に当然に及ぶものではなく賃貸借契約更新後に生

じた未払賃料等について連帯保証債務は存在しないなどの主張をしました(第一審は認

容。)。しかしながら、最高裁判所は「期間の定めのある建物の賃貸借において、賃借人の

ために保証人が賃貸人との間で保証契約を締結した場合には、反対の趣旨をうかがわせる

ような特段の事情がない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務について

も保証の責めを負う趣旨で合意がされたものと解するのが相当であり、保証人は、賃貸人

において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新

後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れないというべきである。」

として、連帯保証人側の主張を棄却しました。

この考え方は、以後、連帯保証責任を巡る判決で数多く引用されるところとなっていま

す。昭和16年の借地法・借家法改正でいわゆる正当事由の考え方が導入され、賃貸人は正

当事由がないと賃借人との契約更新を拒絶できず自動的に更新される(法定更新)ことに

なり、これに伴って連帯保証人も保証債務を賃貸借契約更新後も引き継ぐという考え方が

この最高裁判例に結実したと言えるかもしれません。学説もこの考え方を基本的に支持し、

判例法理としても確立しているようです。実務の側でも、連帯保証人とのトラブルを防ぐ

ため、当初の契約書等の中に、「(連帯保証については)本契約が合意更新あるいは法定更

新された場合も同様とします。」と記載したり、賃貸借契約更新の都度連帯保証人も含めて

賃貸借契約書を結びなおす、提携する家賃保証会社の利用を勧めるといった対応が行われ

ているようです。

しかし、この考え方は、連帯保証人側から見ますと、賃借人保護立法により賃貸人の負

担が重くなったことのしわ寄せが自分に及んできているということもでき、このしわ寄せ

を何とか押し戻したい、できれば連帯保証人になりたくないといった感覚につながってい

るのでしょう。連帯保証人側からの押し戻しの成功例としては、民法や不動産取引に詳し

い学識経験者等からなる当機構内の取引事例研究会(委員長:升田純弁護士・中央大学教

授)でも取り上げた判例(平成25年6月14日東京地裁)があります。訴外A(牧師さん

だそうですが)が会堂に利用している建物の賃借料を支払わないことから、賃貸人が連帯

保証人(信者で公務員だそうですが)に対し滞納賃料として約1235万円(82ヶ月分に該当)

の請求を行ったものです。判決では、賃貸人が漫然と賃借料不払いを放置し、結果として

莫大となった滞納額を連帯保証人に請求することは信義則違反であると判断する一方で、

連帯保証人は当初賃貸借契約に記載の期間については保証する意思を有していたとして、

最初の賃貸借期間内に該当する滞納賃料、つまり3年分から既払い分を控除した200万円

弱に限り請求を認容しました。

賃料の延滞が継続している場合、賃貸人としては速やかに契約解除に動くのが一般的感

覚であり、本件のように長期にわたって滞納家賃が増加するのを放置し、後でまとめて連

帯保証人に請求するというのはおかしく、賃貸人の懈怠で滞納額が増加している場合には

一定の制限が加わってしかるべきであるという本件判決の考え方は納得できます。似たよ

うな判例に、区営住宅の賃貸人が、使用料等の滞納が長期にわたり継続しているにもかか

わらず、賃貸借契約の解除等の措置をとらず放置した上で連帯保証人に対し行った保証債

務の履行請求が信義則に反し権利の濫用として許されないとしたものがあります(平成24

年7月18日東京地裁)。

次に(2)のような相談についてですが、例えば住宅宅地審議会答申に基づいて作成された

賃貸住宅標準契約書第16条の「連帯保証人」の条項でも「連帯保証人は、賃借人と連帯し

て、本契約から生じる賃借人の債務を負担するものとする。」としているように、賃貸人か

らの損害賠償請求はなかなか防ぎようがなく、請求額の妥当性を争うほかないと考えられ

ます。連帯保証人へのこのようなしわ寄せを押し戻すものとして、さる8月の法制審議会

で承認された民法改正要綱仮案において建物賃貸借契約における個人保証の場合の極度額

制度が採用されました。保証人が個人の場合、保証契約に極度額を記載する必要があり、

この定めがないと保証契約そのものの効力がなくなるもので、これまで貸金等保証債務に

認められていた条文がそれ以外の一般的な保証債務に拡大されるものです。賃貸人は、賃

借人による原状回復義務違反や賃料滞納等に備えて敷金を預かりますし、一定の賃料保証

会社の活用、目的物の重大な損傷等に備えた損害保険への加入など、賃貸人側のリスクを

軽減する手法は充実してきています。連帯保証人の保護の観点や、核家族化が進行し連帯

保証人になることを敬遠する方々が増えている現状などから考えても、保証契約の極度額

の考え方については、基本的に賛成できるところです。

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