RETIOメルマガ第97号より引用しております。
今回は、「買主業者が売主の手付解除を妨害したと思われる事例」についてご紹介します。
相談者(売主)は仲介業者の紹介により買主業者と、「手付金50万円、中間金100万円、
売買代金は1500万円、違約金2割」の条件にて中古マンションを売却する契約を結びまし
た。
当初手付金は100万円で契約の話を進めているとのことでしたが、契約日に準備できない
として、買主業者から契約日手付金50万円を、契約日から5日後に中間金として100万円
を売主は受領しました。しかし、その後、売主は体調不良のため転居することを断念せざる
を得ず手付倍返しで契約の解除を仲介業者に申し出ました。
ところが、買主業者に手付解除を申し入れた仲介業者は、買主業者から「売主の勝手な事
情では手付解除はできない。どうしても解除するなら違約金が必要になる。」と言われたと
のこと、仲介業者の説明によると、買主側が売買代金の一部として中間金を支払っており、
これが「履行の着手」に該当し、履行の着手後は手付解除は認められず、解除する場合は、
契約条項にしたがい、「契約違反」による「違約金」を支払って解除することになりますと
のことでした。
売主は、いろいろな所に相談された末、当機構へご相談をされました。
当機構では、(1)中間金の支払いは買主の契約履行の着手があったと認められる(神戸地
裁H4.2.28判決)、(2)買主は売主の「履行の着手」までは手付解除が可能(最高裁S40.11.24
判決)であるとの判例を踏まえ、売主は、中間金を受領したことによって、手付倍返しによ
る解除ではなく違約金2割の支払いをしなければならなくなるが、手付金の一部としての中
間金支払いである場合には、「履行の着手」に当たるか否かの判断は微妙であり、裁判所の
判断を待たなければならないこと、契約日から5日後に中間金を支払うとの約定が買主業者
主導で決められた場合には、買主業者が売主の手付解除を妨害したと思われることなどを勘
案し、法律相談することをアドバイスしました。
宅建業者が売主の手付倍返しによる解除を妨害する行為は重大な宅建業法違反(宅建業法
47条の2、65条等)ですが、売主が抵当権抹消等の手続きに要する費用として中間金の支
払いを求めたような場合には、中間金を受領したことによって買主の「履行の着手」があっ
たと認められることとなります。宅建業者がこのような取引に関与する場合、中間金の授受
があると売主の手付倍返しによる解除ができなくなることを、売主にしっかりと説明してお
くことが望まれます。
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