財団法人不動産適正取引推進機構 相談・紛争事例55より引用します。
(相談の内容)
賃貸アパートの契約をして、礼金、敷金、翌月分の前家賃(当月の賃料はサービス)、仲介手数料、
保険料の合計40万円を支払い、鍵も受け取りました。入居は契約日から10日後を予定していました。
契約前に物件の見学をした際、部屋のクリーニングがされてなく汚い状態でしたが、明日には業者を
入れてきれいにしておくとの返事でしたので、契約しました。
入居予定の3日前に部屋を確認に行ったところ、ゴミは捨ててありましたが台所の油汚れなどは汚い
ままでしたので、仲介業者に電話したところ、ゴミは処分してあったはずだ。それ以上は自分でする
ように言います。あまりにも誠意がないので入居した後も不安です。契約を解除したいと思っています。
友人から、仲介業者は契約の前に重要事項説明をしなければならないと聞きましたが、仲介業者は重要
事項説明をしていませんし、重要事項説明書ももらっていません。重要事項説明をしていないので、
この契約は無効だと思います。仲介業者は自分の都合で契約をキャンセルするのだから、お金は返せない
といいます。お金は返してもらえますか。
(回答)
契約の解除をしたいと思うに至った直接の原因は、仲介業者が約束したクリーニングを行わずに誠意の
ある対応をしないことにあると思われます。確かに、仲介業者の対応は不誠実であり、非難されても仕方
がありません。また、この仲介業者は、契約を締結する前までに重要事項説明書を交付もせず、説明もして
いませんので、宅地建物取引業違反が認められます。しかし、確かに重要事項説明をしていないことは重大
な宅建業法違反ですが、「重要事項説明義務違反」と「契約」は別の問題です。宅地建物取引業法違反をした
仲介業者は行政処分の対象になりますが、重要事項説明が行われずに締結された契約も有効に成立しています。
無効になることはありません。したがって、契約は有効に成立していますので、当該契約の解除は、契約の
約定により処理されることになります。
入居前ですので敷金は返還されるべきお金ですが、その他の金銭は、一般には返金されないと考えておいた方
がよいでしょう。しかし、保険契約が未締結であれば保険料は返すべきお金になります。
また、仲介手数料については、仲介業者が重大な宅建業法違反を犯していることから、交渉の余地があります
ので、話し合ってみましょう。なお、仲介業者の宅地建物取引業法等の法令に違反する行為が原因で損害が生じ
ている場合、損害を受けた者は仲介業者に対して、その損害の賠償を求めることが可能です。
不動産に関する税金、家賃集金代行など不動産管理に関するお問い合わせ