相談・紛争事例61

財団法人不動産適正取引推進機構 相談・紛争事例61より引用します。

<貸主さんからの契約解除と正当な事由について>
築40~50年の古い2階建のアパートを賃貸中の貸主さんからの相談がありました。
入居者の方から耐震上問題ないか心配なので、耐震補強をして欲しいとの要望があった
が、貸主さんとしては耐震補強には費用が掛かるので解約したいが、貸主の方から解約で
きるかとの問い合わせでした。
入居者の方にすれば、最近、テレビや新聞報道によって地震による建物倒壊等による危
険が頻繁に報道されており、耐震性についての関心が高まっていることは事実ですので、
借主さんのお気持ちも理解できるところです。
一方で、貸主さんとしては、耐震補強をする場合に多額の費用が掛かる場合も考えられ
ますので、その費用負担をするよりもむしろ解約しようと思われる事情もある程度理解で
きなくはありません。
借地借家法では、貸主さんの方から賃貸借契約を解約するには「正当な事由」が必要と
されています。この「正当な事由」とは、建物の老朽化も考慮されるわけですが、実際に
は、余程の老朽化状況がないと認められないのが実情です。従って、耐震補強の問題だけ
で正当な事由に当たると考えるのは難しいと言えるでしょう。
裁判事例を見ますと、(1)貸主さんが建物の朽廃、倒壊の危険性が高く正当な事由がある
として解約を求め、一方で、借主さんが補修工事の実施を求めた事案で、裁判所は、正当
事由を否定して、貸主さんに補修工事の実施を命じました(東京地裁 平成22年3月1
7日判決 RETIO No83参照)。(2)貸主さんが、築40年経過した共同住宅の建て替え等
を理由に解約を申し入れたケースで立退き料の額が争われた事案で、裁判所は、引越料そ
の他の移転実費と移転後の賃料と現賃料との差額の一定期間分の額を、移転資金の一部を
補てんする立退き料として認定しました(平成12年3月23日 東京高裁判決 RETIO
No48参照)。それ以外にも、(3)テナントビルのオーナー(貸主)さんが、耐震性能を備え
ていないこと、その耐震工事が建物設備等の劣化により相当困難であること、を理由に解
約を申し入れたケースにおいても、裁判所は正当な理由を補完するものとしての立退き料
の支払いを条件に解約を認めています(平成23年1月18日 東京地裁判決 RETIO
No83参照)。
上記判例等からしますと、貸主さんから解約を申し入れる場合の「正当な事由」はかな
り厳しく判断されることが分かります。そして、仮に認められる場合においても、一定の
立退き料の支払いが、正当な事由を補完するものとして条件付けられる点を充分に留意す
べきでしょう。

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