相談・紛争事例83

財団法人不動産適正取引推進機構 相談・紛争事例83より引用します。

○ 賃借しているマンションが競売にかかった場合の退去に関するご相談
賃借しているマンションが抵当権の実行による競売にかけられました。引き続き入居を希
望していますが、住み続けることは可能でしょうか。また、退去しなければならない期限
等はあるのでしょうか。なお、重要事項説明では抵当権が実行された場合の説明はありま
せんでした。
ポイントは次の2点となります。
(1)抵当権設定と、賃借物件の引渡しを受けた(占有移転)時期はどちらが先か
   抵当権設定が、引渡しを受けた時期より後の場合は、借地借家法第31条1項によ
  り、引渡しを受けることで、引渡し後に設定された物権(本ケースでは抵当権)に対
  して対抗できるとされているため、退去する必要はありません。
   逆に、抵当権設定が、賃借物件の引渡しより前の場合は、賃借人は対抗できないの
  で退去しなければなりません。賃貸借物件建築は融資を受ける場合が大半ですので、
  通常はこちらのケースが一般的と言えます。

(2)抵当権の設定が引渡しより前のため、退去しなければならない場合
   退去時期については、賃貸借契約締結の時期により、2つに分かれます。

 1.貸借契約を平成16年3月31日までに締結した場合
   民法改正前の法律が適用され、賃貸借契約期間が3年以内の短期賃貸借であれば、
   競売された場合でも短期賃貸借保護の制度により、賃貸借契約の残存期間は住むこ
   とができます。また、敷金の返還も競落人に対して求めることができます。ただし、
   差押登記設定後に更新した賃貸借契約は、競落人には対抗できないので、競落人か
ら退去を求められたときは明け渡さなければなりません。
 2.賃貸借契約を平成16年4月1日以降に締結した場合
   競落人から退去を求められた場合は借家権の主張は認められず、明渡し猶予期間は
   6ケ月となるので、借家人は6ケ月以内に建物を明け渡さなければなりません。ま
   た、敷金の返還は競落人に請求できず、元の貸主(所有者)に求めることになりま
   す。(元の貸主に資力がないため、返金できないケースが多々あります。)なお、入
   居者は退去までの期間は、競落人に対し賃料相当額を支払う必要があります。

  なお、宅建業法上の義務はありませんが、媒介をする宅建業者が抵当権が実行された場
 合の不利益について説明しなかった場合、民事責任を問われることがありますので注意が
 必要です。
借地借家法第31条1項   建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その
後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。

民法第395条   抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又
  は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の
  競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを
  要しない。
一  競売手続の開始前から使用又は収益をする者
二  強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益を
  する者
2  前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が
  抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履
  行がない場合には、適用しない。

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